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ヤクルト村上宗隆は「プロ野球史上最高のバッター」になりえるか? ライバルは落合博満&王貞治…過去の三冠王と“徹底比較” 

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太田俊明

太田俊明Toshiaki Ota

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photograph byL)BUNGEISHUNJU、R)Naoya Sanuki

posted2022/11/01 11:00

ヤクルト村上宗隆は「プロ野球史上最高のバッター」になりえるか? ライバルは落合博満&王貞治…過去の三冠王と“徹底比較”<Number Web> photograph by L)BUNGEISHUNJU、R)Naoya Sanuki

22歳にして伝説的三冠王たちと肩を並べた村上は、日本プロ野球史上最高の打者になりえるのか?(写真左が落合博満、右が村上)

 王が自己最高の55本塁打を記録したのは入団6年目の24歳だが、初の三冠王獲得は33歳。これについて王は「55本塁打の頃がパワーのピークであり、多少芯を外してもフェンスを越える感覚があった。三冠王を獲った頃は心技体のバランスがピークだった」と語っている(『もっと遠くへ』王貞治、日本経済新聞出版)。

 そう考えると村上も、30歳前後で打者としての円熟期を迎える可能性が高いのではないか。

 次に比較表を見て気づくのが、村上の体格である。野村、王、落合は170センチ台で、当時のプロ野球選手としても平均的なサイズである。松中のみ180センチを超えているが、村上の188センチ、97キロという体格は、頭一つ抜けている。

 野球界、特に打撃のパワーという点に関しては、体格が大きい方が明らかに有利だ。ボクシングで言えば、ヘビー級のパンチはミドル級のパンチを確実に凌駕するので、階級に分けられている。その点、体格差関係なく同じフィールドでプレイする野球では、ことパンチ力、すなわち長打力に関しては体格が大きい方が確実に有利である。

 ストライクゾーンも同様だ。身長が高くなればストライクゾーンの縦幅は広くなるが、ホームベースの長さは決められている。それゆえストライクゾーンの横幅は相対的に狭くなり、アウトコースの球にもバットが届きやすくなる。実際、188センチの村上が打席に立つと、インコースもアウトコースもバットが出しやすい幅の中に収まっているように見えて、対戦する投手には大きなプレッシャーになるだろう。

 体格に勝ることで、パンチ力で上回り、ストライクゾーンの横幅が相対的に狭くなる。村上は、この利を活かして他の三冠王とは異なる打法をとっている。それが、逆方向にも打ち分けられる「広角打法」と、構えた位置から体を動かさずにバットを振る「コンパクト打法」である。

村上は落合タイプ? 打ち方の「違い」

 まず広角打法について。今シーズンの56本塁打を見ると、右方向25本、中堅方向13本、左方向18本と、見事に打ち分けている。広角に打てる理由には、もちろん技術もあるが、引っ張るよりも体の力を使いにくい、流し打ちでもスタンドに届くパワーがあるということだ。

 また、村上はパワーを活かして、構えた位置からほとんど身体の反動を使わずに(右足を軽く上げるだけで)、来た球に向けてバットを一直線に出す。この2つの打法が村上の特徴といえる。では、他の三冠王はどうか。

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