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ヤクルト村上宗隆は「プロ野球史上最高のバッター」になりえるか? ライバルは落合博満&王貞治…過去の三冠王と“徹底比較”
text by
太田俊明Toshiaki Ota
photograph byL)BUNGEISHUNJU、R)Naoya Sanuki
posted2022/11/01 11:00
22歳にして伝説的三冠王たちと肩を並べた村上は、日本プロ野球史上最高の打者になりえるのか?(写真左が落合博満、右が村上)
王は、有名な一本足打法で、大きく右足を上げて体重を左足一本に乗せ、そこから右足を踏み込んでいくことで体重移動を利用した大きな力を球にぶつけている。
落合は、スイング前に左足を大きく外に踏み出し、下半身と上半身の捻転差を利用した回転力でバットを加速させている。
松中は、王ほどではないが右足を高く上げる“半一本足打法”であり、振った後に上体が投手側、あるいは一塁側に大きく傾くほど体重移動を使っている。
野村と王は引っ張り専門のプルヒッターであり、松中はセンター方向にも打つが、基本はプルヒッター。体重移動の力で打たない落合のみ広角打法といえる。
カットボールのように、わずかにボールを変化させることでバットの芯を外す球(投手)が多くなった現代では、この落合流の打法の方が、球を呼び込めるので対応しやすい。その点、村上も体重移動に頼らない打ち方であり、22歳にしてすでにこの打法を身につけている。
史上No.1打者になるために…何が必要?
村上は、過去の三冠打者に比べて、若さ、体格、パワーで勝っている。しかし、だからといって、数年後にプロ野球史上最高の打者になれるかといえば、ことはそう簡単ではない。
王には、有名な天井からぶら下げた短冊を真剣で両断するという鬼気迫る特訓から生まれた「球にバットをぶつけて終わりではなく、バットで球を真っ二つに切り裂くイメージで振り抜く」という達人の技と集中力があった。
野村には「不器用な自分が打つには、相手の配球を徹底的に研究して、次にどんな球が来るか、予測するしかなかった」という頭脳と研究心があった。
松中には「インコースを引っ張った打球がファールにならないよう、腕を畳んで内側からバットを出し、球に右から左に曲がっていくように回転をかける打法を身につけてから打てるようになった」という、当時のダイエー王監督も「現代の打者にしては珍しく型を持っている」と唸った技術があった。
落合には、天才としか言えないほどのミート力、バットコントロール力があった。
過去の三冠王の数字を見ると、特に王と落合の成績が群を抜いているのがわかる。この二人に比べて、村上は、打率、三振数、出塁率、長打率、OPSで、差をつけられている。これからは持ち味の長打力を殺すことなく、いかにミート力を上げていけるかがカギになるだろう。