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立教大55年ぶり箱根駅伝出場まで何があった?「“夜10時半消灯ルール”に下級生の反発もありました」“走れなかった”4年生キャプテンの告白
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byEKIDEN NEWS
posted2022/10/20 17:03
立教大学駅伝チーム・キャプテンのミラー千本真章(4年)。2年連続で日本選手権1500mに出場している
新しいチームが発足すると、副将の金城快(4年・作新学院)、寮長の辻京佑(4年・札幌西)と話し合いをする機会が多くなり、彼らから箱根駅伝出場への熱い思いが伝わってきた。ミラーは自分の色を出していくのではなく、どちらかといえば、みんなの思いを引き受けるタイプのリーダーだった。
その話し合いの中から提案したのが、消灯時間を設けることだった。
「部の合宿所、紫聖寮が出来たのは、2020年の3月、僕が大学1年の終わりでした。ちょうどコロナ禍に見舞われ始めた時期で、翌月には緊急事態宣言が出されました。合宿所が出来て、上野監督が門限時間を夜9時30分に設定しましたが、一斉に消灯することはなかったんです。でも、早めに寝る選手たちが、夜11時過ぎに歯を磨きにくる選手の物音で、うるさくて眠れないという意見が出てきたのと、夜更かしをしていて、果たして朝練習の質が高まるのかという疑問がありました。そこで10時半に消灯するというルールを提案したんです」
そうすると、下級生たちから反発も出た。
「強豪校がやってるから、やろうとしてるだけじゃないですか?」
「各自の判断に任されるべきなんじゃないですか?」
立教を選んで入ってきた選手たちだけに、個性も主張も強かった。それでも、消灯時間は実行された。ミラーたち幹部にとっても譲れなかった。
反発が生まれた背景には、延々と続くコロナ禍の大学生活が影響していたとミラーは分析する。
「今の3年生以下は入学した時からコロナ禍でしたし、会食は制限され、必ず9時半に戻る生活を強いられてきました。そうすると、一般学生と一緒に時間を過ごすことができない――とまでは言いませんが、せっかく立教に入学したのに、なかなか思うように自由な時間が過ごせなかったわけです。不満は大きかったですよ。そこで、部で話し合った結果、『寮長、監督に事前届け出の上で月2回まで、門限以降の外出を認める』ことになりました」
この3年間、どれだけ学生たちが我慢を強いられてきたか、想像するに余りある。大学生活の定義が変わってしまった3年間だった。
泣きながら「キャプテンにやり甲斐を感じられない」
ただし、規則への反発は、時に暴走を招きかねない。立教の校歌には「自由の学府」という言葉があり、「自由」の解釈をめぐって大人と学生、学生同士が時に反目する。