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35歳でPBを更新した佐藤悠基が語る。「自己ベストを出すためには大きく頑張るのではなく、半歩でいい」
posted2022/10/20 10:01
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph by
Takeshi Nishimoto
加齢とともに体の衰えを感じているランナーは多いだろう。だが、高速化するマラソン界において、進化を続け、その存在感を増しているのが佐藤悠基だ。今年の東京マラソンでは自己ベストを41秒更新する2時間8分17秒、日本人6位でゴールした。
「ただ、あのレースでは2時間8分切りで、自動的にMGCの権利を獲得するのが目標でした。権利獲得は達成できましたが、レースでは終始体がハマらなかったし、タイム的にはもう少し行けたのではないかと思っています」
走れるようになったら何がしたいか
昨年5月、本来であれば、マラソンに向け、距離に重点を置いたトレーニングを行う予定だった。だが臀部に故障を抱えた佐藤は、走ることもできず、体幹トレーニングやバイクを使ったメニューに切り替えざるをえなかった。
「走れないときは、どうしても気持ちが腐って、モチベーションが下がりがちです。だけどトレーニングをしなければ、何も改善しません。気持ちは焦りますが、それよりも走れるようになったら何がしたいか、常に先のことを考えるようにしていました。マラソンはすべてにおいて、いかに自分をコントロールできるのかがカギだと思っています。レース中は前に行きたい気持ちを我慢して、気持ちや体を抑えますよね。だけど自分をコントロールすることは、レース前から求められている。練習中や怪我をしたときも、どう自分の気持ちや体をコントロールするのか。そういったところからも精神力が養えると思っています」
佐藤のマラソンでの課題は30km以降にあった。そこで夏に入り、朝練習の距離をこれまでの15kmから20kmへと延ばした。