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立教大55年ぶり箱根駅伝出場まで何があった?「“夜10時半消灯ルール”に下級生の反発もありました」“走れなかった”4年生キャプテンの告白
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byEKIDEN NEWS
posted2022/10/20 17:03
立教大学駅伝チーム・キャプテンのミラー千本真章(4年)。2年連続で日本選手権1500mに出場している
「立教の学生にとって、自由ってキーワードなんですよ。でも、自由とワガママは違いますよね。集団で生活していることでの責任もありますし、選択には自由と責任も伴います。なんでもかんでも、自由にしていいわけじゃない。みんなのストレスは分かりました。でも、部としては強くなることが目的なわけで、責任について考える機会が少ないかなとは思いました」
新しいカルチャーを作る時期にコロナ禍が重なり、「自由」と「規律」のせめぎ合いは続いた。板挟みの立場になったミラーは、何度も弱音を吐いたという。
「1月の後半、本当にきつくてトレーナーさんに『僕、キャプテンにやり甲斐を感じられないんですよ』と泣きながら話してしまったこともありました。それから自分自身も教育実習や、就職活動に逃げていた部分もありました。でも、下級生たちも、消灯時間を守ってくれて、その効果に気づいたんじゃないかと思います。データでは取っていませんが、朝練習の質は確実に上がったと思いますし、チーム全体の強化にはつながったと4年生の間では信じています」
予選会でチーム内2位に入った中山は、「11時過ぎまで起きていた生活が信じられません。いまはもう、10時前から眠くなります」と話しているという。
「予選会は走れないけど、3日前から眠れなくなった」
チーム全体が力をつけていくなか、ミラーは6月の日本選手権、9月の日本インカレには出場したものの、膝のケガを発端にしたヘルニアのために悶々とした日々を過ごし、夏の選抜合宿にも合流できなかった。
「走って背中で見せるキャプテンっていますよね。でも、僕にはそれが出来なくて。選抜合宿では副将の金城がみんなを引っ張っていたので、『やっぱりキャプテンは俺じゃなく、金城だったよな……』と思うこともありました」
徐々に調子は上向いていったものの、予選会のメンバーに名を連ねることはなかった。
「予選会は走れない。走れないけど、3日前からうまく眠れなくなりました。直前の雰囲気もよかったし、実力を発揮できれば通過できるとは思っていましたが、不安で、不安で」
そして歓喜の時はやってきた。