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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
鎌田大地「戦術練習やミーティングが以前と…」長友佑都「より繊細に詰めていける」 日本代表、変貌の背景に“2つの要素”と悲劇の教訓
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/09/24 20:00
アメリカ戦勝利後、吉田麻也と森保一監督は意見交換をしていた。こういった細部の積み重ねが本番へとつながると信じたい
これまで指揮官は選手の意見やアイデアに耳を傾け、選手にディスカッションをさせ、選手の個性を組み合わせ、選手たちが主体的にプレーできるように促してきた。その試みが最終局面に入り、これまでの経験や意見を集約させていくフェーズに入ったのかもしれない。
「緊張感のある中で話し合っていて……」
もうひとつの要素として、選手たちのコミュニケーションもより深まっているようだ。長友が明かす。
「ミーティングもそうだし、すごくいいディスカッションが日々繰り広げられていて、こういうプレスを掛けたいとか、こういうプレーをしたいとか、若い選手たちからすごく意見が出るんですよ。緊張感のある中で話し合っていて、今までの代表でここまで意見を言い合える関係性はなかったんじゃないかなと。より繊細に詰めていけるんじゃないかと思っています」
若い選手が積極的に自分の意見を言えるということは、現在の森保ジャパンでは“心理的安全性”が担保されている、あるいは、され始めたということだろう。チームビルディングは新たなステージに入ったと言える。
アメリカ戦では、原口元気を投入して5バックにする逃げ切り策も試し、冨安の右サイドバック起用もテストした。前半に右サイドバックを務めた酒井宏樹が言う。
「たとえば、僕が試合に出て、中3日で今度はトミが出て、ということができたら、決勝トーナメントに行ってもフレッシュな選手が出られることになる。(ターンオーバーに限らず)すべてに関して準備をしていると思います。僕もトミも怪我が多いですから」
ここでも、チーム作りが細部まで着手されてきたことが分かる。
課題は多々あるが、総仕上げの確認ができたのも事実
もちろん、中盤のスライドはもっと早くしなければならないし、相手がシステムを変えてきた際の対応はもっと早く行わなければならない。課題は山ほどあるが、W杯に向けた総仕上げが至るところで確認できたのも事実だ。吉田が力説する。
「結果が付いてきたのは良かったですけど、今の時点で結果よりは、内容というか。やっていることが固まっているかどうかのほうが大事。今日に限って言えば、そこができた部分が多かった。ただ、今日は良かったけど次はできないとか、この間はできなかったけど、今日はなんとなくできたではなく、なぜできたのかを明確にして、それを意図的に次のゲームでも出していけるように、しっかり分析して、話し合って、磨き上げてカタールW杯を迎えられるようにしたい」
その意味で言えば、残るテストマッチのエクアドル戦やカナダ戦はさらに課題が噴出するような、危機感を募らせるようなゲームであっていい。本番で戦うドイツ、コスタリカ、スペインの実力は、この日のアメリカの比ではないのだから。
今回のW杯は欧州のシーズン中である冬に行われるため、準備期間が圧倒的に短い。それゆえ、11月17日のカナダ戦のみならず、アメリカ、エクアドルと対戦する9月シリーズから「事前合宿」(反町康治技術委員長)という位置付けとなっている。
岡田武史監督に率いられた10年南アフリカW杯でも、西野朗監督のもとで戦った18年ロシアW杯でも、直前のラスト3試合でチームはまるで生き物のように大きく変化していった。
森保ジャパンもメンバー選考や戦い方などを含めて、さらなる大きなうねりを見せるに違いない。どのようなメタモルフォーゼを経て、初戦のドイツ戦を迎えるのか――。それを見逃す手はない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。