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監督の激怒と公開説教…「サッカー人生、終わったかもしれんわ」 それでも鎌田大地はなぜ「市場価値31億円」の高評価なのか〈インタビュー〉
posted2022/06/14 11:00
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Hideki Sugiyama
チームメートの前で監督の説教が始まった
「ふざけるな! こんなことで勝てるわけがないだろ!」
フランクフルトが試合に敗れた後だというのに、ロッカールームは、優勝チームのセレブレーションが終わったあとのような散らかりようだった。蹴られて先端が曲がったまま倒れているペットボトルが、グラスナー監督の怒りを表していた――。
2022年2月19日のケルンとのアウェーゲーム。鎌田大地は、後半開始時から試合に送り出されたのにもかかわらず、アディショナルタイムに入る直前にベンチへ下げられた。
途中出場からの途中交代。この状況に悔しさがないわけではなかったが、タッチラインを出て、監督と軽くタッチをかわしてから、ベンチに下がった。どんなに不満があっても、ここで握手を拒否したりすれば罰金の対象になる可能性もある。プロとしては当然の判断だ。
結局、試合は0-1で終わった。両チームが健闘をねぎらい、握手や言葉をかわしていく。それが一段落していたとき、鎌田は、監督の視線に気がついた。何か言いたげな様子だ。だが、あえて目線を合わせないようにした。納得の出来ない部分があることを態度で示すためだ。ところが、それでも監督が近づいてきて、雷を落とされた。
そして、ロッカールームに戻ると、チームメートの前で監督の説教が始まった。テーマは、鎌田がチームの求めることをこなせていない点と、鎌田の態度だった。
人生のなかで最も厳しい勢いで叱られました
その後、チームはバスで帰ることになった。ところが、夜遅くにフランクフルトへ到着すると、今度は本拠地のロッカールームに選手たちは再び集められた。
「EL優勝? CLの出場権獲得? このままでは到底、無理だぞ!」
怒号を飛ばしたグラスナー監督は、そこでも鎌田の名前を挙げた。チームメートの前での公開説教が再び始まった。
鎌田は振り返る。
「シーズン前半戦の最後はチームのために働いて勝ち点も稼いでいました(*前半戦最後の7試合で6勝1敗)。でも、ウインターブレイクの後の起用法になかなか納得できなくて。あの試合は自分も試合に集中しきれていなかったかもしれないし、何より、僕のパフォーマンスが良くなかったので。監督がそれに対して、すごく怒るのはわかるのですが……」
オレのサッカー人生、終わったかもしれんわ。
大げさではなく、そう思った。