濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「いつも花の写真やLINEを見て…」米国で奮闘中の女子レスラー・ジャングル叫女は“親友・木村花のいない時間”をいかに吹っ切ったのか
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![橋本宗洋](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/3/e/-/img_3e695eddb40b312a8b8e4e58a09cfcd013505.jpg)
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by本人提供
posted2022/09/23 11:04
![「いつも花の写真やLINEを見て…」米国で奮闘中の女子レスラー・ジャングル叫女は“親友・木村花のいない時間”をいかに吹っ切ったのか<Number Web> photograph by 本人提供](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/8/5/700/img_8589312e95ce9ddb137146038061503995589.jpg)
現在はフリーとしてアメリカを拠点に活動しているプロレスラーのジャングル叫女
「響子さんのおかげで吹っ切ることができた」
「その時点で海外で試合をしようと考えていて、後楽園はコンディションを確かめる意味がありました。でも体調面だけでなく、気持ちも受け止めてくれる相手がよかった。それは響子さんしかいないなと」
叫女はプロレスの試合に“ストーリー”を求める。陸上出身だからか、プロレスを始めた時は対人競技がとても新鮮だったという。そしてプロレスが対人競技かつコンタクトスポーツであるからこそ、闘う理由を重視した。それがないと思ったら、インタビュースペースでのコメントやSNSでストーリーを発信していった。理由もなく相手を殴ったり蹴ったり投げ飛ばしたりはできない、と叫女は言う。
復帰に向けたエキシビションも同じだった。欠場していた間にためこんだ思い、そして花への気持ちは、誰にでも受け止められるものではなかった。
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「響子さんとのエキシビションでは、魂のぶつかり合いができたと思います。この2年間、ずっとしんどかった私と響子さんが叫びながら殴って、蹴って、エルボーを叩き込んで。あれ以上に気持ちがこもったプロレスはないんじゃないかなって。響子さんだから私の気持ちを受け止めることができたし、響子さんは私が相手じゃなかったらリングに上がってないと思います。リングで向かい合った時、響子さんは泣いてました。それを見て、私も覚悟が決まりました。響子さんのおかげで吹っ切ることができた」
「花からのメッセージなのかもしれないな」
1カ月ほど前にも、リングへ向かう気持ちを後押しされる出来事があった。
「2回目の手術をした頃、半年くらい前までは“プロレスやめようかな”と思っていて、いつも花の写真やLINEでの会話の履歴を見ていたんです。“あの時、花にこう言えてたら……”、“こういう言葉をかけていたら、その先も変わったのかな”みたいなことばかり考えて。
だけど最近、携帯電話の機種変をした時にLINEのデータが消えてしまったんです。機種変したらデータを更新しなきゃいけないのを知らなくて。花とのやりとりの履歴も全部、消えてしまいました。もしかしたら、それは花からのメッセージなのかもしれないなって。“ジャングルさん過去を振り返りすぎだよ。前を向いて頑張ってよ”って言われた気がするんです」
花のことは忘れない、けれど忘れないまま吹っ切って前に進むこともできるはずだと思った。プロレスラー・ジャングル叫女を求めてくれる人たちがいて、リングという居場所がある。海外で活躍することは、花の目標でもあった。
「2人で夢を語り合ったことは忘れません。でも、私が闘うのは“花のため”とか“花の分も”というだけじゃない。最初はそう思ってたんですけどね」