フリーレスラーとして始まった闘い

　日本ではフリー女子レスラー限定のイベント『NOMADS'』に出場予定で、オファーがあれば帰国する予定だ。もちろんベースはアメリカでの試合。日本でもアメリカでも、スターダム時代とは違う新しい相手との闘いが待っている。

「新しい相手と新しいストーリーを描いていくのが、これからは重要になってくるはず。そういう時に、いつも“花への思い”をぶつけるわけにもいかないですから。それは相手に失礼じゃないですか。相手に応じて、笑えるような試合だってしたいですし」

「スターダムの選手たちとも、気持ちよく試合ができる日が来るはず」

　退団したとはいえ、スターダムにも叫女を気にかける選手たちがいる。海外での試合が決まると、後輩である飯田沙耶が叫女の得意技ジャングルバスター（キン肉バスター）の変形バージョンを披露。技の名前は「達者でなっ！（仮）」だった。「素直に嬉しい」と叫女は言う。

　昨年12月、スターダム両国国技館大会では、体調不良で退団、一時休養に入る小波が花の技に加えジャングルバスターを仕掛けようとする場面もあった。対戦したジュリアは、花の最後のライバルだった選手だ。

　小波はかつてTCSのメンバーだったが、花たちを裏切って大江戸隊へ。しかしこの所属ラストマッチでは、TCSのコスチュームで登場した。

「大江戸隊の小波ではなくレスラー・小波として闘いたかった。それでこのコスチューム。今は亡き戦友と、スターダムのリングにはいないもう1人の戦友の気持ちも背負って闘ったつもりです」

　試合後、小波はそう語っている。それが「小波なりのケジメのつけ方」だったのだろうと叫女は思った。

「一度は裏切ったTCSのコスチュームを着ることで、前に進もうとしたのかなと。だけど、小波も私も現役レスラーですから。いろんな思いもありますし、いつか私たち同士のケジメをつける時も来るんじゃないかと思ってます。スターダムの選手たちとも、気持ちよく試合ができる日が来るはずです」

さまざまな思いを胸に秘めながら

　その日までに“フリー女子レスラー・ジャングル叫女”のバリューがどれだけ高まっているかにも注目したい。

「私はこれまでのキャリアでシングルのベルトを巻いたことがないんです。アメリカでたくさんシングル王座を獲りたいし、それを防衛していく中で新しい経験ができると思います。シングルのチャンピオンになることは、レスラーとしての一つのスタートという面がある。ということは、私はまだ始まってもいないんですよね」

　アメリカでの初戦、日本での修行経験もあるマーシャ・スラモビッチとのシングルマッチはフォール負け。しかし叫女は男女合同大会のメインイベント、かつ赤コーナーに遇され、現地のプロレスファンから大コールを浴びて復帰を果たした。入場コスチュームは和服がモチーフ。さまざまな思いを胸に秘めながら、あるいは日本に置いて、彼女はたった1人で闘っている。アメリカではすべてが新しい経験で、過去を振り返ったり感傷に浸る余裕はない。きっとそれが、今のジャングル叫女にとって何より大切な環境なのだ。

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