プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人の”新4番”中田翔33歳は何が変わったのか?「 追い込まれても正直、狙っていたけど今は…」「4番はカズマ(岡本和真)の打順」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2022/09/10 06:00
9月8日のDeNA戦で逆転3ランを放ち、巨人ナインに迎えられる中田翔
勝つことを唯一絶対の価値とする巨人の4番のあり方の話をしたときだ。常に最高の仕事(本塁打)を目指すのは当たり前だが、全ての打席でその仕事ができるわけではない。そこで、アウトカウントや走者など状況によっては犠牲フライや進塁打など「最低限、何をしなければならないか」ということをきちんと意識して打席に立たなければならない。
それも「巨人の4番」の仕事だというのだ。
「三振か本塁打か」から「最低限の仕事」へ
この話をしたのは中田がまだ自分の打撃に苦悩していた4月のこと。そこで思い出したのが4月7日の広島戦のある場面だ。満塁で岡本が打席に入り、左中間に二塁打を放った。このときの岡本のバッティングは高めの球を右手で押し込むように打って、最低でも犠飛を狙った打撃で、それが結果的に外野手の間に落ちて二塁打となったのである。
その直後に無死二、三塁で打席に入ったのが5番の中田だった。このときの中田は初球をフルスイングして捕邪飛に倒れている。まさにホームランしか頭にない、最高の仕事だけを考えた“マン振り”だったのである。
ただ、いまはあのときの2人が真逆のバッティングをしているように見える。
中田は2度のファーム落ちを経験する中で、長嶋茂雄終身名誉監督の指導により、すっかり打撃スタイルが変わった。バットを少しだけ短く持って、コンパクトに振ることで、逆にスイングにキレが出るようになった。練習では右方向を意識してしっかりバットの軌道とポイントを確認したりもしている。
要は今までの「0か100か」「三振か本塁打か」というスイングから「最低限の仕事」ができる対応力を磨くことで、むしろ100の結果が出るようになってきている。
ただ、そこに辿り着くまでには、長い道のりがあった。長嶋監督やさまざまな人々の手助けもあったが、最後は中田が自分自身で切り開くしかなかったし、その結果でもある。
それは、いまの岡本にも同じことがいえる。