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巨人の”新4番”中田翔33歳は何が変わったのか?「 追い込まれても正直、狙っていたけど今は…」「4番はカズマ(岡本和真)の打順」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2022/09/10 06:00
9月8日のDeNA戦で逆転3ランを放ち、巨人ナインに迎えられる中田翔
ライバルと言われたヤクルト・村上宗隆内野手にすっかり置いて行かれてしまった焦りもあるはずだ(決して本人は認めないだろうが……)。それ以上に長いスランプで思うように本塁打が出ないことで、自分の打撃への迷いがあるように見える。
あんなに頭を抱える岡本の姿を見たいか…
ただ、ファウルになった打球で、あんなに頭を抱える岡本の姿を見たいファンはいないはずだ。「次にまた打てばいい」とばかりに悠然としているのが、背番号25だったからである。
高橋由伸前監督が岡本を4番に据えたのは、監督就任3年目の2018年6月2日のことだった。
高橋監督は就任1年目から岡本のポテンシャルの高さを評価し、だからこそ毎年一軍に抜擢していた。しかしそこで岡本がなかなかその期待に応えることができず、結果を残せなかったのも現実だった。
1年目の2016年は5月27日からの阪神戦で一軍に呼ばれ、翌28日の試合で二塁打を1本放ったものの、打撃内容の悪さにわずか3試合でファームにUターンさせられた。その年は再昇格のチャンスもなかった。2年目の17年には開幕一軍に抜擢された。中日との開幕シリーズでは「7番・左翼」で先発し、第3打席で左前安打を放った。ところがその後は全く快音が響かず、4カード12試合でまたも二軍に落とされている。9月に再昇格した際も2試合で結果が出なかったために、すぐさま二軍に逆戻りだった。
そして迎えた3年目だった。
開幕の阪神3連戦に「6番・一塁」で先発出場すると、第2戦で左越え3ランを含む4安打の活躍。第3戦でも2試合連発の3ランと爆発し、3連戦で11打数5安打2本塁打の8打点という結果を残した。この活躍があって初めて岡本は一軍に定着することができたのである。さらに開幕から51試合で9本塁打をマークしたことで、6月2日の満を持した4番抜擢へとつながっていくわけだ。
「岡本は高橋監督が我慢して起用し育てた」という話をよく聞く。もちろん岡本のポテンシャルを見抜き、将来の4番候補としてその才能を何とかモノにさせようとした高橋監督の思いがあったのはその通りである。
誰のおかげでもない。自分で掴んだ「巨人の4番」
ただ打てなければ、結果を残せなければ、使えない。高橋監督も決して我慢して、成績不振に目をつむって使っていたわけではない。結果を残せなければ容赦なく二軍に落としてきた。その中で岡本は18年に初めて、自分の力で一軍の居場所を確保することができた。結果を積み上げることで「巨人の4番」を自らの手で掴み取ったのである。
誰のおかげでもない。そこからずっと自分の力で「巨人の4番」を担ってきたはずなのだ。
それは、中田も同じだった。