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「なぜ近江のエース・山田陽翔は完投にこだわらない?」「なぜ最強スラッガー・浅野翔吾は4番ではない?」夏の甲子園、4つの“新常識”
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNanae Suzuki
posted2022/08/18 11:03
近江のエース・山田陽翔。ベスト8進出まで、3試合に先発して完投は1。今春のセンバツでは4試合連続で完投したが、何が変わったのか?
「岡山の監督さんに助言してもらったんですけど、相手からすると1番から浅野を迎えるのは怖いんじゃないかと言ってもらって。その通りだと思って、(浅野を)1番にするようにしました」
2回戦の佐久長聖戦で、浅野は2打席連続本塁打を放ち、チームを勢い付けた。前田健太などを育てた佐久長聖・藤原弘介監督は「あの2発で投手の心が折れた」と語る。
一方、2番に強打者を置いたのが鶴岡東と聖光学院だ。
鶴岡東はホームランバッターの土屋奏人が2番を務め、2試合で3本塁打。メジャーリーグでは2番に最強打者を置く傾向があるが、まさにそうした配置で打順の流れを作っていた。
聖光学院は「1番~6番までを務めることができる」高中一樹を2番起用。
1番・赤堀颯が第1打席で出塁することが多く、高中の1打席目は送りバントのケースが多いが、それ以後は自由に打っている。1回戦の日大三高戦では2打席目に二塁打で出塁して得点につなげると、3打席目には起死回生の逆転本塁打を放ちチームの勝利に貢献した。
その高中は、3回戦までで打率.750をマーク。脅威的な打棒を誇っている。
聖光学院・斎藤智也監督はいう。
「攻撃型という狙いもあって高中を2番にしています。パンチ力がついてきて、今や1番から6番までできる選手に成長してきた。赤堀に代えて1番にするというわけにいかないですし、2番に置いとくのが一番いいと。犠打だけじゃなくて『打てる2番』という考え方。初回にバントしましたけど、エンドランで行こうかと思ったぐらいなんです。それくらい攻撃型の2番として使えるようになってきたのは非常に大きいです」
【3】ピンチでも「前進守備をしない」
さらに、今大会目立つのが目まぐるしい守備のポジショニング変更だ。
ベスト8に進出した仙台育英は左打者になると右翼線を開ける。右打者では逆だ。
また、興味深いのは無死あるいは一死二、三塁のピンチになっても、前進守備を敷かないチームが増えたことだ。序盤なら1、2失点は構わない、あるいは、点数をリードしているときは失点覚悟という考え方が広がってきている。
走者2、3塁におけるポジショニングは過去の大会でも、物議を醸したことがある。