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スランプの巨人・岡本和真の身近にいる“いいお手本”? 新4番・中田翔の“結果”にみる変わる勇気「チャンスが岡本を追いかけてくる」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2022/08/16 11:03
後半戦、不振に陥っている巨人の岡本和真(左)と新4番を任された中田翔(右)
アドバイスをきっかけに松井さんは打席でスパイク半足分、約15㎝だけホームベース寄りに立ち、外のボールを逆方向へ打つ意識を高めた。その変える勇気をきっかけに復調を果たし、その年はオールスターゲームにも出場し、メジャー1年目から打率2割8分7厘、16本塁打を放って、ヤンキースのルーキーとしては史上3人目となる100打点以上(106打点)を記録することになる。
岡本の身近にいる”いいお手本”
変える勇気という点では、岡本にとってもう1人、もっと身近にいいお手本もいる。岡本に代わって第91代の「4番」となった中田翔内野手である。
中田もまた開幕直後から打撃不振に悩み、2度のファーム落ちを経験した。そこで駆けつけた長嶋茂雄終身名誉監督らのアドバイスを聞き、自分の打撃スタイルを思い切って変えることで復活を遂げた。
それまでの力感を求めた大きなスイングから、バットを気持ち短く持って、コンパクトに鋭く振り抜けるスイングに変えたのだ。そうすることで確率が上がり、それでいてスイングが鋭くなることで長打も出ている。
その結果が「4番」に座った8月11日の中日戦から14日の広島戦までの4試合で14打数7安打の打率5割、2本塁打6打点という好結果に結びついているのは読者もご存知のところだろう。
だとすれば変えることに頑固な岡本が、どう勇気を持って変わることができるか。そこがスランプ脱出への、1つのカギであることは間違いない。
単純にバットを短く持つという方法もあるだろう。それとも打てる形を整えるためにグリップの引き方を変えるのか。体が開くのを抑えるためにスタンスをスクエアか、むしろややオープン気味に変えるという方法もある。それともボールを待つ時間を増やすために、テークバックを省略して先にトップの形を作って待つようにするのか……。
打順を「6番」に下げた原監督は…
ほんのわずかな変化でも今までと打席で見える風景はガラッと変わるかもしれない。それでも結局、答えは試行錯誤を繰り返して自分で見つけ出し、勇気を持って決断するしかないのである。
「そうそう、もうそういうものなのよ。どこにいようがね!」
打順を「6番」に下げても、結局、チャンスで岡本に打順が回ってくることを聞かれた原監督は小さく頷き、スランプ脱出への答えは自分にしかないとこう語った。