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「ワタルはマシーンみたいだった」ブッフバルトが語る、遠藤航がシュツットガルトで“愛される”理由〈浦和時代の思い出も〉 

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円賀貴子

円賀貴子Takako Maruga

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photograph byGetty Images

posted2022/08/04 06:00

「ワタルはマシーンみたいだった」ブッフバルトが語る、遠藤航がシュツットガルトで“愛される”理由〈浦和時代の思い出も〉<Number Web> photograph by Getty Images

今季も引き続きシュツットガルトでキャプテンを務める遠藤航。クラブのレジェンドであるギド・ブッフバルトもその活躍に期待を寄せる

――ベッケンバウアーやブッフバルトさんのようなスターがいたということは、ドイツでは当時も守備に対する認識が高かったのでしょうか?
 
ギド うーん、でもやっぱりドイツでも子供たちにサッカーをやらせると、みんなゴールを決めたいんだよね(笑)。基本的には攻撃的に考える。時々フランツ・ベッケンバウアーのような天才的選手がいたけど、ドイツでも大スターになるのは基本フォワードの選手たちだったから。

――とはいえ、守備陣の仕事が近年とても高く評価されるようになっていることは、今夏の移籍市場を見てもわかりますよね。バイエルンが獲得したマタイス・デリフトは移籍金6700万ユーロ(約95億円)、新シーズンそのパートナーを務めるであろうリュカ・エルナンデスには驚異の8000万ユーロ(約111億円)の値がついています。

ギド どのクラブチームや代表チームが成功しているかを見てほしい。たとえばPSGにはキリアン・エムバペ、ネイマール、リオネル・メッシと最も優れた攻撃的選手が揃っている。でもチャンピオンスリーグで優勝はしていない。それは守備に問題があったからだよ。最も大きな成功を収めるのはいつも、守備が優れているチームだ。もちろん彼ら3人が一緒にプレーをするのは面白いし、子供たちがそれを見て、僕もああいうゴールを決めたいと思ったりするのはいいことだよ。

 でもレアル・マドリーの(セルヒオ・)ラモスとか、バルセロナの(ジェラール・)ピケとか、過去に成功したチームには必ず守備のスター選手がいたし、彼らがいたからこそ、攻撃陣がその良さを出し切ることができた。安定した守備なくして、タイトルを勝ち取ることはできない。それだけ価値のある選手だということだろう。

 2004年にオットー・レーハーゲル監督が率いたギリシャ代表がEURO制覇という、ものすごいサプライズを起こしたけど、あれはまさに守備的な戦術で得たタイトルだよね。相手にスペースを与えず、安定した守りで、徹底的に失点を防いだ。時に自分たちで得点を決めて欧州王者になった。

監督として戻ったJリーグで驚いたこと

――90年代にブッフバルトさんは選手としてJリーグでプレーしました。当時の日本のディフェンダーにはどんな印象を持たれましたか?

ギド 全体的に守備の意識はあまり顕著ではなかった。すべてを攻撃中心に考えていたと思う。速さがあって攻撃的なプレーをする素晴らしい選手はいたけど、守備の教育はあまりされていなかった。ユース時代、育成でもそこにあまり力を入れていなかったと思う。それはすぐにわかった。とてもいいプレーヤーではあるけれど、考え方や、いかに守るかという戦術的なことなどにおいては、かなり追いつく必要があった。その後、戦術やデュエルといった面ですごく良くなった。

――しかも当時加入したレッズは、上位争いをするようなチームではなかった。新加入選手として難しくなかったですか?

ギド それ(守備を安定させること)が私を獲得した理由でもあった 。守備ができなければ、失点数以上の得点を決めることができない。戦術的な連携がうまく行かなかったり、個人のミスが多いせいで、試合に負けることが多かった。だから私はチームメイトとよく戦術の話をするようにしていた。

 どうやって(ポジションを)スライドするかとか、このシーンではどう守るか、とか。当時はユース部門からトップに上がってきた選手を見て、あまり良い守備の教育を受けていないことがすぐにわかった。だから今の現状を見ると、育成面でもいろんなことが変わったのだと思う。

 日本には今、優れた守備の選手がたくさんいる。私の考えだと、何かを認識してからそれが変わるまでに、サッカーではだいたい10年かかる。戦術面のあるポイントに焦点を当てて、それが変わるまでに一世代だね。

――それはつまり、ブッフバルトさんが監督としてレッズに戻った時には状況が良くなっていたと?

ギド そうだね。当時のチームには本当に良いディフェンダーがいてね。(田中マルクス)闘莉王がまさにそうだった。それに、お互いとどう話をするかといったコミュニケーション面でもそうだし、どうやってみんなで守備をするかという戦術的な面でも全体的に向上している印象を受けた。

【次ページ】 W杯で激突「僕はドイツファンだから(笑)」

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