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「ワタルはマシーンみたいだった」ブッフバルトが語る、遠藤航がシュツットガルトで“愛される”理由〈浦和時代の思い出も〉
text by
円賀貴子Takako Maruga
photograph byGetty Images
posted2022/08/04 06:00
今季も引き続きシュツットガルトでキャプテンを務める遠藤航。クラブのレジェンドであるギド・ブッフバルトもその活躍に期待を寄せる
――遠藤の契約は2024年までとなっています。クラブのレジェンドの一人としてどんな活躍を期待しますか?
ギド リーダーシップだね。航はもう経験豊富なベテラン選手だ。シュツットガルトには若い選手が多いので、彼らがさらに良くなって、チームがさらに成功できるようにピッチ上で導いてほしい。そしてチームとして次のステップを踏み出さなければならない。いつも残留を目指すのではなく、まずは中位くらいにつけてブンデスリーガでもっと認められるようになってほしいんだ。
このクラブには偉大な歴史があり、私の現役時代は常にトップ5、6に入るチームだった。それが近年、降格や残留競争の繰り返しで。この状況から抜け出さなければならない。それをやってのける上で、航はリーダーとして、大きな役割を果たしてくれるはずだ。
日本人のディフェンダーは信頼できる
――期待したいですね。もう1つ伺いたいテーマが、日本人DFについてです。ブンデスリーガにやってくる日本人というと、以前はほぼ全員攻撃の選手でしたが、最近では守備的な選手が増えている印象です。
ギド たしかにそうだね。日本でも良いディフェンダーが増えているということが言えるんじゃないかと思う。以前も攻撃的選手はたくさんいた。ブンデスリーガにいる選手でいえば鎌田大地や原口元気といった選手たちだ。今は守備的だけど、長谷部誠だって元々は攻撃的なプレイヤーだった。
ただ、日本でも試合に勝つためには優れた守備の選手が必要だという認識が高まったのではないかな。それは日本代表を見てもわかる。失点が非常に少ない。時に得点が少なすぎる時もあるけど、守備は以前よりずっと安定している。
若い選手たちの発展、たとえばシュツットガルトの伊藤を見ても、非常に堅実でデュエルに強く、ビルトアップの良いパスを出すことができる。ブンデスリーガで日本人ディフェンダーが人気なのは、彼らが非常に信頼できるプレーヤーだからでもある。本当にミスが少ない。
――守備に対しての認識が変わったという見解でしたが、それはやはり育成での変化があったのでしょうか。
ギド そうではないかと思う。今のユースの子たちにとっても、良いお手本になる選手はたくさんいるし、ディフェンダーが高く評価されるポジションだということがわかるだろう。指導者もおそらく、守備の練習に力を入れているだろうし、守備陣が良いパスを出せることの重要さを子供たちに教えているんじゃないかな。
――吉田麻也(シャルケ)、板倉滉(ボルシアMG)、伊藤といったブンデスリーガでプレーする選手が注目を集め、日本の若い子たちにとって憧れの存在になることが大切だと。
ギド まさにそうだ。ユース時代から得点を決めることだけでなく、守備も大切なんだということを理解する。まあ日本でだけでなく、世界各国が守備を重要視するようになってきたのだけれどね。
ドイツでは「“前”で得点は決まるが、試合を決めるのは“後ろ”だ」という言葉がある。失点しないことが、試合に勝つための基本条件だということだ。もちろん、良い攻撃をおろそかにしてはいけないということだが、つまり守備と攻撃のバランスをうまくとらなければいけない。それができたら素晴らしいチームだ。