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“あのゴルシ産駒”がツイッターで話題に…GI馬も登場、今年も“スターホースだらけ”の相馬野馬追がつくる第2の馬生「9割ほどが元競走馬」
posted2022/07/31 11:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Akihiro Shimada
千年以上の歴史を有する世界最大級の馬の祭「相馬野馬追」が、7月23日(土)から25日(月)にかけて、福島県の太平洋側に位置する相馬市と南相馬市、浪江町を舞台に開催された。
コロナ禍のため3年ぶりの通常開催となった今年の相馬野馬追には、五郷騎馬会(宇多郷、北郷、中ノ郷、小高郷、標葉郷)から350騎ほどが出陣した。
甲冑をまとった騎馬武者が街中を進軍する「騎馬武者行列」、旗指物を背にした武者たちによる「甲冑競馬」、空から舞い降りる神旗を奪い合う「神旗争奪戦」、騎馬武者たちが裸馬を追い込む「野馬懸(のまかけ)」などが、大勢の観客の前で行われた。
出陣する馬の約9割が元競走馬
相馬野馬追に出陣する馬の9割ほどが元競走馬だ。つまり、この祭は、引退した競走馬が「第2の馬生」を歩むうえで、非常に大きな受け皿となっているのである。
今年もたくさんの元競走馬が、新たな役目を懸命にこなす姿を見ることができた。なかには、「あの馬はここにいたのか!」と話題になり、ツイッターのトレンドワードになった馬もいた。
まずは、土曜日の御発輿(ごはつよ)の行列で出会った馬たちから。
各騎馬会の馬の到着を雲雀ヶ原祭場地前で待っていると、中ノ郷騎馬の佐藤弘典さんが声をかけてくれた。騎乗しているのはハギノグラミー(牡12歳、父タニノギムレット、中央12戦0勝、地方3戦1勝)だ。佐藤さんはかつて大山ヒルズのキッチンマネージャーをつとめていた。また、乗馬のインストラクターの資格も持っているので、入ったばかりの若手に馬乗りを教える役割も担っていたという。ハギノグラミーは、現在、佐藤さん自身が所有して繋養する、いわゆる「自馬(じば)」である。(※なお、現在はセン馬になっていても、現役時代に去勢されていなかった場合、プロフィールには「牡」と記す)
小高郷螺役の今村一史さんが乗るプレシャスベイブ(牝16歳、父グランデラ、中央3戦0勝、地方2戦0勝)は、普段、栃木の乗馬クラブにいる馬だ。2015年に初めて野馬追に出てから、縮小開催となった年以外は毎年参加している。野馬追に出る馬の半数ほどは、この馬のようにほかの地域からこの時期だけレンタルされてくる馬たちだ。
雲雀ヶ原祭場地の内馬場の小高郷纏場(まといば)の前に、小高郷騎馬隊の本田賢美(さとみ)さんが騎乗するニホンノチカラ(牡13歳、父ハーツクライ、中央7戦1勝)がいた。曳き手綱を持っているのは、賢美さんの母・宏美さんだ。後述するが、賢美さんの兄・賢一郎さんと、父・博信さんも出陣している。