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沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
“あのゴルシ産駒”がツイッターで話題に…GI馬も登場、今年も“スターホースだらけ”の相馬野馬追がつくる第2の馬生「9割ほどが元競走馬」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byAkihiro Shimada
posted2022/07/31 11:00
相馬野馬追の甲冑競馬の様子。今年は3年ぶりに全行事が行われた
相馬野馬追は単なる「祭」ではない
翌朝、ホテルから雲雀ヶ原祭場地近くの駐車場へ向けてクルマを走らせると、一般道のアスファルトにボロ(馬糞)が落ちていた。しばらく進むと、前方に、甲冑行列の出発地点を目指す騎馬武者たちが見えてくる。南相馬ならではの光景だ。ドアミラーには、ほかの騎馬武者たちの一団が映り、こちらのテンションも上がってくる。
相馬地方には、まるで犬を飼うように、自宅の敷地で馬を飼育している人がたくさんいる。馬と人との距離が、ほかのどの地域より近いのだ。この地に住まう人々にとって、相馬野馬追は単なる「祭」を超越した、人と馬、人と人との絆を確かめ、さらに強める特別なものになっている。
Twitterでも話題…初出陣のブラックホール
そんな今年の相馬野馬追に関して、SNS上で、他の追随を許さぬ主役になっていた元競走馬がいた。
2019年の札幌2歳ステークスを制したブラックホール(牡5歳、父ゴールドシップ、中央10戦2勝)である。「ゴルシ」の愛称で人気のあった「猛獣」ゴールドシップ産駒として重賞初制覇を果たし、3歳時にはクラシック三冠に皆勤。4歳になった21年1月の万葉ステークスで8着に終わったのを最後に、故障のため現役を退き、行き先がはっきりしなくなっていた。
そこに突然、ブラックホール本人(本馬?)のツイッターアカウントが登場し、相馬野馬追に初出陣することが明らかになったのだ。7月23日、土曜日の早朝のことだった。フォロワーはみるみる増え、「いいね」も多いもので6000以上、リツイートも1000以上に。いわゆる「バズった」状態となり、「ブラックホール」がツイッターのトレンドワードになるほどだった。
しかし、どの騎馬会の武者が騎乗しているのかは、ツイッターの写真に、役職と氏名が書かれた肩章が写っていなかったので、わからなかった。とりあえず、鞍上が背負った旗指物の写真をスマホに保存し、日曜日の騎馬武者行列で見つけることにした。