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〈日本代表考察〉Jリーグの戦術、本当に自分のモノになってる? 脇坂泰斗や田中碧、守田英正の“川崎仕込みの立ち位置”が示すヒント
posted2022/07/26 11:02
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Hiroki Watanabe/Getty Images
東アジア4カ国によるE-1サッカー選手権の香港戦が行われたカシマサッカースタジアムと、中国戦の舞台となった豊田スタジアムの共通点――。
それはスタンドの傾斜がきつく、記者席が上層部に設けられていることだ。それゆえ、上空から見下ろすようにピッチを俯瞰して眺められる。
だから、一目瞭然なのだ。誰が、どこに立っているか、が。
もう少し正確に表現すると、味方のフィールドプレーヤー9人、敵のフィールドプレーヤー10人とどんな関係性を築き、どれくらいの距離感を保っているか、が。
「上手いなあ」と感じた脇坂の立ち位置
その点において、この2試合で「上手いなあ」と感じたのが、川崎フロンターレのMF脇坂泰斗だ。味方をサポートするポジショニングだけでなく、相手にとって嫌な位置に立ち、「ここに入れてくれ」と言わんばかりのジェスチャーでパスを要求する。
つまりは、そこに立っている理由が伝わってくる選手、ということになる。
「相手の三角形の中心だったり、ギャップで受けるのがすごく上手いと思って。そこから前を向いて簡単に外に出していく感じで、相手もすごく嫌だったと思います」
そう語ったのは、香港との初戦で25分ほど一緒にプレーした横浜F・マリノスの20歳、藤田譲瑠チマである。
三角形とは、相手のセンターバックふたりとボランチだったり、相手のセンターバックとサイドバックとボランチだったりを結んでできる三角形のこと(四角形になることも)。その中心に立つことで、誰からもプレッシャーを受けずに済むというわけだ。
“脇坂的な選手”がいれば左の森島もやりやすかったはず
香港戦で脇坂が途中出場して10分ほど経ったあたりから、脇坂にボールがポンポンと入るようになり、攻撃のリズムが良くなっていった。成長著しいU-21日本代表のキャプテンにとって、参考になるプレーがたくさんあったに違いない。
「前と後ろをつなぐ役割、怖がらずにボールを受けて捌いてっていうところが自分の良さ」とは脇坂本人の言葉。首を振る回数やバックステップでポジションを取り直す回数も多く、味方にパスコースを指し示すことも少なくない。