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大学野球PRESSBACK NUMBER
64連敗…“弱かった”東大野球部「ヤバい、このままだと大学4年間で0勝だ」OBが明かす、なぜ法政大の野球エリートから1勝できたか?
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph bySankei Shimbun
posted2022/07/10 11:00
2021年春のリーグ戦で東大は法政大に勝利。苦しみ続けた64連敗をストップすることができたが…なぜこの1勝を挙げることができたのだろうか?
一橋大では準硬式野球部に所属したものの、東大野球部への未練は常に感じていたという。そんな折、2017年10月の秋季リーグ戦で東大野球部は連勝し、15年ぶりに勝ち点を獲得。しかも相手は法政大。早稲田大とリーグ最多優勝回数を競い合う、強豪チームである。その試合での東大野球部の戦いぶりに心を鷲掴みされた井上は、翌年2月の東大受験を決意した。現役当時は東大受験など思いもよらなかった球児が、野球をやりたい一心で東大に食らいついていくのだから、東大野球部の引力は凄まじいものがある。
「六大学の強豪私立に勝っている東大野球部の姿が格好よすぎて、諦めきれませんでした。11月から試験日までの4カ月間、苦手な数学を中心に勉強を重ね、ようやく合格できました。これで神宮球場でプレーができると思うと、非常に嬉しかったです」
「まずい…大学4年間がゼロ勝で終わってしまう」
ただ、その印象的な勝ち点を獲得した当時の東大には、日本ハムファイターズにドラフト指名された好投手・宮台康平(2018年卒・湘南)がいた。宮台らを擁した東大は、近年稀に見る強い東大だったが、井上の入部と入れ替わりで偉大な先輩たちが卒業すると、東大は3年間、じつに6シーズンにわたって勝ち星に恵まれなかった。東大と他大学の壁は想像していた以上に高く、厚い。井上は東大で勝つことの難しさを痛感しきりだったという。
「僕らが2年と3年のときは、下級生のときから試合に出場していた選手が多く、実力のある強いチームだと言われていたんですよ。しかし、それでも勝てない。惜しい試合もあるし、引き分けの試合もありましたが、そういった僅差のスコアのときに勝ちきるために必要な力の面で、大きな差を感じました」
東大野球部のメンバーのほとんどは、東大に入りたいという気持ちよりも、東大で野球をしたいという気持ちがあって東大に入っていると、井上は言う。東大で野球をやれているだけで満足している部分が、なくはないのだろう。
「他の大学の野球部ではレギュラーになれないけど、東大ならなれるだろうと思って多くの人は入部しています。そして野球って楽しいよなという気持ちでみんなプレイしているんですけど、3年秋のリーグ戦が終わって勝利未経験という結果に、いよいよ危機感がただよい始めました。このまま行くと、大学4年間がゼロ勝で終わってしまう。それはさすがにまずいだろうということで、3年の冬頃から、チームとして練習や試合の取り組みを変えたんです」
東大野球部は何を変えたのか?
その取り組みとは「定量化」だ。データや動作を解析・分析し、数字をもとに目標を立て、練習の目的意識を変革したという。