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12球団スカウトが注目するドラ1候補・金村尚真(富士大)のリアルな評価…選手権1回戦負けも「この感じ、誰かに似てるな」
posted2022/06/13 17:01
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
亜細亜大の20年ぶり5回目の優勝で6月12日に幕を閉じた第71回全日本大学野球選手権。大学日本一を争う場であるとともに、特に地方大学の選手たちにとっては卒業後の進路を大きく左右する舞台でもある。昨年の大会からは西日本工業大の隅田知一郎(西武)、関西学院大の黒原拓未(広島)、東北福祉大の椋木蓮(オリックス)、上武大のブライト健太(中日)がドラフト1位指名を掴み取った。
そんな格好のショーケースで自らの持ち味を存分に発揮し、多数集まったNPB球団スカウトを唸らせたのが富士大の4年生右腕・金村尚真(かねむら・しょうま)だ。
12球団のスカウトが注目する右腕
6月6日の1回戦・大阪商業大戦が行われた東京ドームのバックネット裏には全12球団のスカウトが集まった。同時開催予定だった神宮球場の試合が雨天順延になったことも大きいが、それを差し引いても大きな注目を集めたのが金村だった。相手も関西六大学野球王者でプロ輩出多数と不足なし。
そんなアピールにはもってこいの舞台で金村は躍動する。初回からキレの良い140キロ台前半から後半のストレートにスライダーやカットボールなどの変化球を織り交ぜて丹念にコースを突いていく。7回に内野安打2本から招いたピンチでセンター前タイムリーを打たれたが、9回1失点にまとめて試合は1対1で延長戦に持ち込まれた。
延長戦は継続打順で無死一、二塁から始まるタイブレーク方式。先頭打者のバントをしっかり処理してアウトを1つ取るが、続く打者にライト前にタイムリーを運ばれ1対2で敗れた。
10回を投げ切り7安打を許したが、うち内野安打が4本と完璧にとらえられた打球はわずかだった。それでも金村は試合後に「ピンチでコースに投げきれませんでした。初戦で終わるために、ここに来たわけではありません」と悔しさを滲ませた。
それでも話しぶりは堂々としたものだった。大会前に応じてくれたオンライン取材からも感じたが、信念の強さと負けず嫌いがひしひしと伝わる顔つきと言動だった。