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大学野球PRESSBACK NUMBER
64連敗…“弱かった”東大野球部「ヤバい、このままだと大学4年間で0勝だ」OBが明かす、なぜ法政大の野球エリートから1勝できたか?
posted2022/07/10 11:00
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph by
Sankei Shimbun
強豪ひしめく東京六大学野球リーグで奮闘する東京大学硬式野球部は、日本最強の文武両道集団との呼び声も高く、企業からは引く手数多。その就職先の詳細は既報の通りだが、そうした“エリートサラリーマン”の道を選ばず、プロや社会人で野球を継続する東大生もいる。野球エリートだらけの過酷な環境に、あえて飛び込む東大野球部OBの目には、何が映っているのだろうか(全2回の1回目/#2へ)。
◆◆◆
255勝1698敗61分。
これは、東京六大学野球リーグにおける、東大の通算成績である(1925年秋~2022年春)。1698敗はリーグ最多であり、2015年春にはリーグワーストを更新する94連敗を記録。2011年の入部者は、在籍した4年間で1勝もできなかったことになる。
東京六大学野球の長い歴史において、東大は唯一優勝経験がなく、史上最高順位は1946年春の2位どまり。万年6位に甘んじ、ときおり最下位を脱出すると、それだけで大きな話題になる。かくも負けを重ねるチームで、選手たちはどんなモチベーションで練習や試合に臨んでいるのか。そんな疑問を持ちながら、筆者は多くの東大野球部OBたちへの取材を進めているが、本稿では、とりわけ東大野球部を愛し、そして野球にどっぷり浸かったまま社会に出た野球継続OBの声を紹介したい。
“3浪”した苦労人「東大野球部がカッコよすぎて」
まず取り上げるのは、東大から三菱自動車岡崎へ進んだ井上慶秀(2022年卒・県立長野)。“3浪”の末に赤門をくぐった苦労人である。
「もともとは、北海道大を志望していたんですが、高校在学時は全然勉強をしていなかったので、現役ではまったく手が届かなかった。しかし2015年に高校の野球部の1学年上の先輩が1浪して東大に合格し、野球部に入ったと知り、僕も東大を意識するようになりました。その年の5月に東大が94連敗を止め、さらに憧れは強くなりましたが、1浪でも不合格、2浪でも通らず、後期日程で合格した一橋大学に入学しました」