- #1
- #2
大学野球PRESSBACK NUMBER
「正直ツラい…」文武両道エリート・東大野球部四番バッターが社会人野球で痛感した“差”「理屈だけだと東大レベルで終わっちゃう」
posted2022/07/10 11:01
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph by
Sankei Shimbun
◆◆◆
ピッチャーのレベルが別物
4年時は東大の不動の4番だった井上慶秀は、三菱自動車岡崎に進んだ。ここに飛び込んで、井上は野球エリートたちの意識の高さを早々に実感したという。
「今年の4月から社会人野球に進みましたが、レベルが違いすぎて『やばいところに来たぞ』というのが率直な気持ちです。試合で勝つこと。エラーしないこと。最低でもヒット1本は打つこと。これらはみな当たり前のことと捉えられています。しかも、たとえ勝ってもいいプレーをしても、満足はしない。負け続けていた東大ではどれも当たり前ではありませんでした。社会人野球では、みな目標や自分に課すプレーの基準が非常に高いんです。まずは、その高い基準に自分の意識も変えていく必要があると感じました」(井上慶秀)
さらに意識だけでなく、実力の差も歴然。特にピッチャーの能力は大学野球とは別物だとか。
「同じチームの富田蓮(大垣商業)という高卒3年目のピッチャーを相手に、初めて社会人野球の打席に立ちましたが、驚くくらいストレートが速く見えました。体感としては、最速152キロのストレートを放っていた法政大の山下輝投手(現ヤクルトスワローズ)と同じくらい。にもかかわらず富田の球速は140キロほどなんですよ。つまり社会人のピッチャーのボールは、球速よりも速く見える。富田に限らず、基本的にストレートが伸びています。なにしろ飛んでくるボールの音が、『シュー』ではなくて『ゴー』と轟いてきますからね」
「理屈だけだと、東大レベルで終わってしまう」
ボールの伸びが打者の想定を超えると、バットが遅れてしまう。いわゆる「差し込まれた」状態になるわけだが、これを回避するために、目下の井上はタイミングの修正を課題にしているという。それは東大時代には力点をあまり置いていなかった部分だった。