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逆ヘッドタックルで倒れる学生も…名門・早稲田大学ラグビー蹴球部ドクターの1日に密着「コンタクトスポーツには不可欠」
text by
長田昭二Shoji Osada
photograph byYuki Sunenaga
posted2022/07/10 17:00
コンタクトスポーツの中でもとりわけ怪我が多いラグビー。チームドクターの存在は不可欠だ
「監督として安全を維持するには、まず体を強くすることとレベルに合った試合を組むこと、そして基本的なスキルが大切だと思っています。ケガという意味で特に恐いのは“首”の周囲なので、そこをしっかり守れるような指導を心がけています。
ラグビーのような競技にはチームドクターは不可欠だし、試合にしても練習にしても、エビデンスを持った状態で行うことが重要。そこを経験が豊富でラグビー界のチームドクターの第一人者である鈴木先生にお願いできることは助かっています」
無報酬でも責任重大…なぜチームドクターを続けるのか?
チームドクターは無報酬だ。すでに触れたとおり、使った消耗品の実費は請求するが、それ以外はボランティアなのだ。
「チームによって契約内容は異なるようで、謝礼などが出るチームもあると聞いていますが、我々は最初に“ボランティア”として引き受けているので、それを変えるつもりはありません。逆に『申し訳ないので』と、途中から交通費を出してもらえるようになったのですが、我々としては、伝統ある早大ラグビー部の一員として迎え入れられた誇りのほうが大きい」
勤務先の病院の鈴木医師の部屋には、「荒ぶる」と染め抜かれたTシャツが飾られている。大学選手権で優勝して日本一になった時だけ歌うことが許されるこの第二部歌。“新国立”のグラウンドで歌う時、チームドクターもこのシャツを着て、その輪に加わって歌うのだ。
「早大ラグビー部のチームドクターになって15年ですが、この曲を歌ったのは3回。毎年夏合宿の最終日に、1年生は上級生からの口伝で教わるのですが、私たちはその場にはいません。だからまだ曲の最初と最後しか歌詞を覚えていないんです。全部覚えて歌えるようになるまでは、早大ラグビー部の一員でありたいですね」
撮影=末永裕樹