ラグビーPRESSBACK NUMBER

逆ヘッドタックルで倒れる学生も…名門・早稲田大学ラグビー蹴球部ドクターの1日に密着「コンタクトスポーツには不可欠」 

text by

長田昭二

長田昭二Shoji Osada

PROFILE

photograph byYuki Sunenaga

posted2022/07/10 17:00

逆ヘッドタックルで倒れる学生も…名門・早稲田大学ラグビー蹴球部ドクターの1日に密着「コンタクトスポーツには不可欠」<Number Web> photograph by Yuki Sunenaga

コンタクトスポーツの中でもとりわけ怪我が多いラグビー。チームドクターの存在は不可欠だ

 鈴木医師はドクターバッグから痛み止めの薬剤を取り出し、選手の肩に注射する。鍛え抜かれた屈強な体を前にすると、注射針は細く見える。選手がちょっと筋肉に力を入れればそんな針など簡単にへし折られてしまいそうだが、それでも針が刺さったほんの一瞬、選手の眉間にかすかにしわが寄った。

「注射した中身は局所麻酔です。彼は痛み以外のコンディションは問題ないので、事前に痛みだけを取って試合に出す、という判断です。コンディションが悪い選手はそもそも試合には出ないので、試合前に私ができることはこれくらい。あとは試合中のアクシデントへの対応が主になります」(鈴木医師)

「縫合キット、コンタクト、漢方薬」ドクターバッグの中身

 Aチームの試合が始まる前に、ドクターバッグの中身を見せてもらう。

 縫合セット、骨折した時の添え木や水に濡らすと固まるギプス、さらには最悪「心肺停止」となった時に気道確保のために使う挿管用の管もある。

「救急車が到着するまでにすべき大抵の医療処置はできます。まあ、そうならないでほしいのですが……」

 鈴木医師が腰に着けているウエストバッグにも様々な医療用具が入っている。絆創膏、テーピングテープ、縫合用ホチキス、綿球、ワセリン、足がつった時のための漢方薬などのほかに、コンタクトレンズがいくつか入っていた。

「コンタクトレンズを使っている選手は、試合中に衝撃でレンズが外れることがある。その時にすぐに交換できるように、それぞれの選手からレンズを預かっています。鏡がないと入れられない選手もいるので小さな手鏡も入っています」

 準備しておくべき薬品や医療器具に決まりはない。これらは鈴木医師が経験的に必要性を感じて用意したものだ。

 水の入ったボトルも携帯している。

「選手が出血した時に洗い流すための水ですが、暑い時には自分で飲むこともあります(笑)」

【次ページ】 「逆ヘッド」で選手が倒れた…搬送か?様子見か?

BACK 1 2 3 4 5 NEXT
#早稲田大学
#鈴木一秀
#山口重貴
#大田尾竜彦
#日本大学

ラグビーの前後の記事

ページトップ