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逆ヘッドタックルで倒れる学生も…名門・早稲田大学ラグビー蹴球部ドクターの1日に密着「コンタクトスポーツには不可欠」
text by
長田昭二Shoji Osada
photograph byYuki Sunenaga
posted2022/07/10 17:00
コンタクトスポーツの中でもとりわけ怪我が多いラグビー。チームドクターの存在は不可欠だ
試合中はボールを追い続ける「危険度が分かるので」
試合が始まると、鈴木医師はタッチラインに沿って、ボールを追って移動し続ける。日大側のチームドクターも同じ動きをするので、一定の間隔をあけて二人の医師が走り続けることになる。これはかなりの重労働だが、「コンタクトするポイントを真横から見ることでダメージの大きさや危険度が分かるので」と、事も無げに話す。やはり自身がサッカーで鍛えた体力を持つからこそできる仕事であり、医師なら誰にでもできる仕事ではないことがよく分かる。
タッチラインの外側を行き来するチームドクターだが、選手にアクシデントが生じたときは、ゲーム進行中でも医師の判断でグラウンド内に立ち入ることができる。医師が審判にゲームの中断を求めれば試合は止まるが、そうでなければゲームが動くグラウンドの中で医療処置を行うことになる。
「決して珍しいことではないですね。でも医療処置をしているところにボールが来ることはまずない。自然にその一帯を避けてゲームが流れていく。そんなところに、スポーツマンシップが徹底されていることを感じます」
途中突然の雷雨で数十分にわたって試合が止まる事態には見舞われたが(最後の雷鳴から30分経たないと試合は再開できないことを知った)、両軍ともに大きなケガなどもなく試合は進行した。
「逆ヘッド」で選手が倒れた…医師がすぐさま対応する
しかし、試合の最終盤でヒヤッとする場面があった。日大選手のトライを阻止しようとして、早大のウイングの選手がタックルした際「逆ヘッド」となり倒れたのだ。さすがにこの時は試合は止まって、倒れた選手は鈴木医師の指示で担架に乗せられてテントに運ばれた。
「タックルの衝撃で頭蓋骨内部の圧力が高まると意識障害が起きたり、吐き気や嘔吐という症状が出ることがあり、その場合は救急搬送が必要になります。今回はそれがなかったので様子を見ることにしました。ゴールライン近くなので仕方ないプレーです」
試合後に鈴木医師からそんな説明を聞いているときに、タックルを受けた日大の選手がやって来て、担架の上の選手と言葉を交わしていた。見ていて気持ちのいい光景だ。
試合は36対21で早大の勝利。あらためて鈴木医師にチームドクターという仕事について訊いた。