プロ野球亭日乗BACK NUMBER
坂本勇人がいなくなると急にミスが…巨人は主力と控えの「守備格差」をどう埋める? 《30年前に目撃した“ホテル廊下”での特訓とは》
posted2022/05/07 11:02
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kiichi Matsumoto
守備のミスはチームのリズムを崩す。
痛切にそう感じたのは昨年9月の巨人の大失速のときだった。
首位で2位阪神の本拠地・甲子園球場に乗り込んだ9月3日からの3連戦。いきなり逆転、サヨナラで連敗して2位に転落。そして迎えた第3戦だった。
初回に中島宏之内野手の2ランなどで3点を先制。5回には岡本和真内野手の3ランで6対0と圧勝ムードに包まれた試合展開だった。そこで6回からショートの坂本勇人内野手を引っ込めて若林晃弘内野手を起用すると、無死三塁からその若林が平凡なゴロをファンブルして1点を返され、あれよあれよという間に投手陣が打ち込まれた。そうしてアッという間に2点差にまで迫られてしまったのだ。
しかも7回からは若林を一塁に移して、遊撃に廣岡大志内野手を使うと、無死一塁からその廣岡がジェフリー・マルテ内野手のゴロを二塁に悪送球。一、三塁から糸原健斗内野手の二ゴロの間に1点差とされ、代打・糸井嘉男外野手に二塁打を打たれて同点に追いつかれてしまった。
今年も解消されてはいない“守備格差”の問題
勝てば再び首位に返り咲き、悪い流れも断つことができたかもしれない試合だったはずだ。しかしそれをいずれも守りのミスをきっかけに、わずか2イニングで追いつかれ、負け同然のような引き分けにしてしまった。
まさにこの阪神3連戦から9月大失速は始まり、その分岐点になったのが確実に勝たなければならなかった試合を、ミスで落としたこの3戦目だったのである。
それだけに6点差がついた時点で3イニングを残しながら坂本を交代させた原辰徳監督の“油断”を指摘する声があるのは仕方ないかもしれない。ただその一方で疲れが溜まると腰の持病が出る坂本に、どこで休養を与えるかはシーズン終盤には常に考えていなければならないベンチワークの1つのテーマであることも頷ける。
ただ1つだけ確実に言えるのは、若林も廣岡もそうだが、巨人が抱える主力選手と控え選手の“守備格差”の問題だった。そしてその問題はどうやら今年も解消されてはいない。そのことが今年も坂本の離脱で改めてクローズアップされることになった。