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坂本勇人がいなくなると急にミスが…巨人は主力と控えの「守備格差」をどう埋める? 《30年前に目撃した“ホテル廊下”での特訓とは》
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/05/07 11:02
昨年、田口麗斗投手とのトレードでヤクルトから巨人に入った廣岡(32番)。坂本に匹敵する守備力をつけることはできるか?
守りのミスからチームのリズムがおかしくなって……
快調に首位を走ってきた巨人に翳りが見えてきたのは4月30日の阪神戦で坂本が右膝の靭帯を痛めて翌5月1日に戦線離脱してからだった。
坂本が離脱し阪神に3連敗して乗り込んだ敵地・マツダスタジアムでの広島戦。そこで坂本の代役として遊撃に入った廣岡の守りのミスからチームのリズムがまたおかしくなってきている。
まず初戦の1回1死二塁で西川龍馬外野手の遊撃へのゴロを廣岡がファンブル。本来なら3アウトとなるはずだった4番、ライアン・マクブルーム内野手が三振の2死から、先発ルーキーの赤星優志投手が四球を挟んで4連打を浴びて6失点。この試合では廣岡だけでなく岡本に赤星、増田大輝内野手が合わせて4失策と守りが乱れて大量12失点。さらに5日の第3戦の広島の先制点も5回1死一塁から三遊間へのゴロに追いついた廣岡が、間に合わない二塁に悪送球して一塁走者が三進、直後に小園海斗内野手の内野ゴロの間に奪われたものだった。
「まあね、それは本人が一番反省しているところでしょう」
度重なる廣岡の守備のミスに原監督はこうコメントするしかなかったが、この3連戦の2戦目には吉川尚輝内野手が左の肩甲骨付近に死球を受けて、これまた戦線離脱と内野手のピンチは続く。廣岡だけでなく控え野手の“守備格差”問題は短期的にも、長いペナントレースを見据えた長期的にも今後の巨人の1つの大きなテーマとなっているのである。
「グラブとボールが衝突している」
「簡単に言えば守備の基本が全くできていないということですよ」
ある球団OBと廣岡の守備の話になったときに出た嘆きの言葉だ。
「守備の基本は足を使って左足を踏み出すと同時にその前でボールを捕ることですけど、左足を早く踏み出しすぎるから上体が突っ込んだ捕球になる。だから打球の変化についていけないし、グラブとボールが衝突している」
身体能力が高く、長打力もあり、首脳陣が廣岡を買う理由は大いに分かる。うまくすれば坂本の後継者となる可能性も秘めた大型内野手だ。だからこそ、守りをどう鍛え上げるかだ。