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スノボ採点時間「45秒」は誰のため? 平野歩夢がショーン・ホワイトに負けた平昌…“リプレー映像”を見た審判員は「点を入れ替えたいと」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byYumiko Yanai
posted2022/05/01 17:04
平昌、北京五輪のスノーボード男子ハーフパイプでジャッジを担当した橋本涼氏が語る“スノボ採点の改善点”とは
「僕がつけた点は正解だったのかと、いまだに迷いが…」
だがその直後に、ホワイトが2つ目のトリックで「ブーツグラブ」(板をつかめずブーツを触っている状態)だったことがリプレー映像で見えた。ホワイトは最初、板をつかんでいたが、手がずれてブーツグラブになっていたのだ。
「あの時、僕と、僕の隣の席にいた米国人ジャッジは『ショーンとアユムの点を入れ替えたい』と言いました。けれどもジャッジルームでは『待て。ブーツグラブだけに引っ張られるな。アユムはトゥサイドのグラブしかしていない。ショーンは(2つ目以外のトリックで)トゥもヒールサイドのグラブもしている』という話になり、最初に送信した通りの点数を結論としました。けれども、リプレーを見て考える時間が十分にあれば、違う判断になっていたと思います。そういう意味で、今回の北京五輪は4年前と変わっていませんでした」
4年前の平昌五輪のジャッジについて初めてインタビューに応じた橋本氏は、「平昌五輪のことは一生忘れません。僕がつけた点は正解だったのかと、いまだに迷いがあります」と言う。そして「もちろん、北京五輪も忘れることはないのですが、2本目の採点の理由はいたってシンプルでした」とも語った。
“時間をかけてジャッジ”は実現するか?
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橋本氏が考える、ジャッジの立場ですぐにでも改善していきたいこととは、採点のための時間を増やすことだ。現行では約45秒で採点結果を出さなければいけないが、「これではアスリートファーストではなくテレビファーストです」と言う。
「採点結果は選手の人生を左右するもの。しっかり時間をかけてジャッジをしていることが選手に理解されれば不満も出ないし、選手に意見があるならディスカッションして納得のいく方向に進められればいい。そうしていかないとスノーボードの未来がなくなります」
選手の思いや志向を汲み、安全性や公平性を含め、スノーボード界がより発展していくことを橋本氏は願っている。