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平野歩夢“あの2本目”不可解採点…北京五輪・日本人ジャッジが初めて明かす“審査員たちが話していたこと”「僕は平野選手を上にしましたが…」
posted2022/05/01 17:03
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
あの平野歩夢2本目採点…日本人審判はどう見た?
北京五輪のスノーボード男子ハーフパイプで平野歩夢が悲願の金メダルを獲得してから約2カ月半が過ぎた。五輪史上初となるトリプルコークを成功させて頂点に立った平野の勇姿は、今もなお記憶に鮮明だ。けれども一方で、平野の2本目の点数がスコッティ・ジェームズ(オーストラリア)より低かったのはおかしいのではないか、という疑念も人々の心にモヤモヤとしたまま残っている。
なぜ、あの採点になったのか。ジャッジルームで何が起きていたのか。北京五輪でジャッジを務めたFIS(国際スキー連盟)公認審判の橋本涼氏が自身の見解を明かした。
「平野選手の2本目の採点については、実際に僕が選手だったとしたら納得できないと思います。ただ、スコッティ選手の方に高い点を出した審判の判断も理解できます」
橋本氏はそのように語り始めた。橋本氏は高校卒業後からスノーボードの選手として競技会に出場し、26歳で引退。約15年前、30歳頃から審判を志し、ライセンスを取得した。現在はSAJ(全日本スキー連盟)で審判のトップを務めている。これまでに「USオープン」や「DEW TOUR」をはじめ、多くの国際大会で審判を務め、五輪のジャッジは2018年平昌五輪に続いて今回の北京五輪が2度目だった。
スノボ採点は「トータルでの評価」と「相対評価」
ハーフパイプで採点を行なう審判は6人。北京五輪ではスウェーデン人、フランス人、カナダ人、米国人、日本人、スイス人の6人が務めた。採点は100点満点で、最高点と最低点を除いた4人の平均が点数となって出る。
FISが定める採点基準は「完成度」「難度」「振幅(高さ)」「バラエティ」「新規性(将来性、オリジナリティ)」。これら5項目をトータルして見たうえで、100点満点で評価をする。理解しておきたいのは、トリックの一つひとつに基準点があるのではなく、あくまでトータルでの評価とすること。そして、相対評価であることだ。
こういった前提を踏まえたうえで、問題となっている北京五輪の2人の2本目をそれぞれ検証した。