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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「(大谷)翔平は人懐っこく言葉も丁寧ですが」「電撃トレードとFAは…」プロ13年で引退・大引啓次37歳が“大学院に進学”した理由
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/04/24 17:02
引退後の大引啓次。オリックス時代に加えて大谷翔平とともにプレーした日本ハム時代、優勝したヤクルトでの思い出を語ってくれた
筆者は現役最晩年の大引を宮崎県西都市の二軍キャンプで見ている。大引は新人、若手選手に交じって黙々と体を動かしていた。
「個人的には“この子らにはまだ負けへんな”とは思いましたし、ただ一軍で長いことやっている選手はこういう練習をしてるんだ、といういい見本になればと思ってキャンプを過ごしていました」
こうして大引啓次は2019年限りで引退する。1288試合に出場し1004安打、オールスターには3回選出された。
将来的には、大学などアマ野球を指導できたら良いな
そして引退後、大引には独立リーグのコーチの声もかかったが、大学院で学ぶ道を選んだ。
「(浪速高校時代の恩師である)小林敬一良先生に相談したところ、もう一度外で勉強しなさいと言われて、大学院に行く決意をしました。
その前にメジャーリーグを視察したいと思い、日本ハム球団にご紹介いただいて自費でレンジャーズのキャンプの視察に行ったのですが、あいにくコロナで1か月だけになってしまいました。
大学院とは“自分で研究するところ”だと知って、大学ではなく指導者で進路を選ぶことにして日本体育大学の伊藤雅充教授のもとで、コーチングを学ばせていただいています。
将来的には、大学などアマチュア野球を指導できたら良いなと思っています。高校野球は実質2年数カ月で終わってしまうので、あまりにも期間が短いです。やはり、大学、社会人でじっくり教えたいなと思います」
ちなみに早稲田大の野村徹元監督は、法政大1年の大引を見て「下級生だが周りもよく見えていて、素晴らしい選手になるのではないか」と言ったそうだ。見る人は見ているのである。選手としても一流になったが、大引は指導者として“すごい存在”になるのではないか。
未熟ですが、例えば10人の選手がいたとしたら
堺ビッグボーイズで大引は中学生たちを相手に内野守備の指導を行った。自らの身体を使って、守備に大事な身のこなし、打球や送球の「待ち方」などを熱心に教えている。子どもたちには、これがどれだけ「贅沢な時間」であるのかを知ってほしい――とも感じる。
「私の指導者としての原点は、高校時代の恩師、小林敬一良先生です。答えを押し付けるのではなく、選手に考える余地を与えること、選択肢が多くあること、コーチングには絶対的な解がないということを教えていただいたことが今につながっています。
私もまだまだ未熟ですが、例えば10人の選手がいたとしたら、そのうち一人を育て上げる“名コーチ”ではなく、なんとか10人全員進むべき道に導いてあげられるような指導ができるようになりたいと、勉強を続けています」
<第1回から続く>
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