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ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
「選手たちがひとつの怪物を作り出した」トルシエが語る森保ジャパンと日韓W杯代表に共通する“強み”とは「チームとしては、スペインにも勝てる」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2022/04/03 17:05
日本代表を高く評価したトルシエが、とりわけ素晴らしいと評価したのは伊東だった
「その通りで、日本は快挙を成し遂げた。予選突破は遠いところから始まった。途中ではさまざまな懸念もあった。それでも目標を達成できたのは、森保がパニックに陥ることなく選手たちを信頼し続けたからだ。厳しい批判を浴びた彼にとっては簡単ではなかっただろう。自分が成し遂げた仕事に彼は誇りを持っていい」
――しかし凱旋試合でもあったベトナム戦は、一転して満足できない内容であり結果でした。
「その通りだが、それもまたサッカーの一部だ」
――もう少し具体的に話してください。
「グループ1位を懸けた戦いであり、消化試合だが勝って締めくくる。象徴的な勝利でしかないが、この日本代表が素晴らしいチームであり、そのチームを日本国民全体が祝福する勝利となるはずだった。だが、思うようにいかないのもまたサッカーだ」
修正点が明らかになった
――選手を大幅に入れ替えたのはどうだったのでしょうか?
「森保のメッセージは明確だった。これまで出場の機会に恵まれなかった選手たちにチャンスを与える。グループを活性化させ、リザーブの選手たちでも勝てることを彼は示したかった。彼が勝負にこだわったのは、後半に順次選手を代えていったことからも明らかだ。
なかなか得点ができなかったのは、ゴール前での強さを欠いていたからだ。フィジカルも効率も欠き守備的なベトナムを崩せなかった。引き分けはベトナムにとっては快挙であり、日本は不本意なアンチパフォーマンスだが、修正点が明らかになったのだからマイナス面ばかりではない。
絶対に勝ちたいのならば、オーストラリア戦と同じメンバーで臨んでいただろう。それをしなかったのは、ベトナム戦を森保がラボラトリー(実験室)として活用したからだ。ワールドカップに向けての準備であり、久保や柴崎、原口、旗手、上田といった選手たちに頼りにしているというメッセージを彼は送りたかった」