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ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
「選手たちがひとつの怪物を作り出した」トルシエが語る森保ジャパンと日韓W杯代表に共通する“強み”とは「チームとしては、スペインにも勝てる」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2022/04/03 17:05
日本代表を高く評価したトルシエが、とりわけ素晴らしいと評価したのは伊東だった
――しかし前半の出来はひどかったです。
「運動量もスピードも不十分だったし、何度か好機を逃した。またベトナムがCKから先制点を決めて、多少の焦りも生まれただろう。サッカーでは小さなことが自信を揺るがすこともよくある。とはいえ日本は65%以上ボールを支配し(実際には66.6%)、シュートも23本打った。ベトナムは1本だけだった。イタリア対北マケドニア戦を彷彿させたが、違いはイタリアが敗れて本大会出場を逃したのに対し、日本はすでに突破を決めていたことだ。大国が小国に苦戦することはよくある。フランスもときにフェロー諸島などに手を焼く。サッカーとはこういうものと認めるべきだ」
日本はコレクティブな面で優れている
――あなたは以前、このチームには大きな才能のある選手はいないと言いましたが、コレクティブな力による予選突破であったと言えるのでしょうか?
「才能にはさほど恵まれているわけではない選手たちがひとつの怪物を作り出した。ここでいう怪物とは何か。それは個の能力が突出した偉大な選手たちのチームなのか、それともそれなりに優れた選手たちが作り出した偉大なチームなのか。この日本代表にはスターはいない。チャンピオンズリーグに主力として出場している選手はいないしビッグクラブでプレーする選手もほぼ皆無だ。
しかし彼らは優れた戦士であり優れた選手だ。規律に溢れ技術的にも高いレベルにある。優れたチームを作るためにひとつになれるメンタリティを持っている。彼らの意志と規律、協調性と連帯意識がチームを高度なレベルに引き上げた。それこそがこのチームのクオリティであり怪物の正体だ。偉大ではあるが汗かき仕事をしない選手はここにはいない。全員のためにプレーすることを認めてコミュニケーションをとり、心をひとつにすることで日本は優れたチームになった。日本がこの予選を通して示したのは、コレクティブな面で非常に優れているということだった」