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なぜオーストラリア戦の前半は“オープンな展開”になったのか? 中村憲剛が大一番の深層に迫る「日本は成功体験に縛られていたのでは」 

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中村憲剛+戸塚啓

中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka

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posted2022/03/28 17:01

なぜオーストラリア戦の前半は“オープンな展開”になったのか? 中村憲剛が大一番の深層に迫る「日本は成功体験に縛られていたのでは」<Number Web> photograph by Getty Images

3月24日のオーストラリア戦、吉田麻也とアイディン・フルスティッチのマッチアップ。オープンな展開となった前半戦を中村憲剛氏が解説する

 相手の状況を素早く見極めた日本は、敵陣から積極的なプレスを敢行し、奪ってはショートカウンターを繰り出します。相手ゾーン間で縦パスを何本も通し、バイタルエリアで前を向いて仕掛け、サイドにも悠々と展開し、クロスも上げ、ペナルティエリアに侵入し、シュートも打てました。攻守でうまくいかないオーストラリアを尻目に、思ったような攻撃を繰り返していきました。

浅野拓磨のCF起用がもたらした効果とは?

 プレビューでもテーマにあげた大迫勇也に代わるCFには、浅野拓磨が起用されました。

 どのポジションにも共通することですが、森保監督のなかにはポジションにおける序列があります。浅野は継続的に招集されてきた選手のひとりですから、たとえば守備のスイッチの入れ方もここまでのミーティングで何回も聞いている。ポジションは違うものの、チームのやり方を分かっています。

 一方、上田綺世は昨年11月の招集がおよそ2年ぶりで、最終予選に一度も出場していません。チームとしての機能性や準備期間の短さを考えると、浅野を先発させて上田は途中交代で、という順番が森保監督のなかにあったのだと思います。

 森保監督は戦前に様々なシミュレーションをしたはずで、その想定には自陣に押し込まれる展開ももちろんあったでしょう。相手に押し込まれる展開になれば、高くなった相手最終ラインの背後に広大なスペースができます。そうなると浅野のスピードによるカウンターが際立ちます。また、自分たちが主導権を握る展開になっても、浅野のスピードは相手CB陣に効果的と考えたはずです。

 実際には日本がボールを握る展開になり、浅野は相手の背後を突くランニングはもちろん、背後のランニングを利用したポストプレーも予想以上にこなしていました。その理由として、立ち上がりに背後へのランニングで攻撃のポイントを作れたことが大きかった。

 彼のスピードを目の当たりにした守備側からすると、最終ラインを高く設定してコンパクトに保つことが難しくなります。高くしたことで間合いを詰め過ぎると、それを利用されて引っ繰り返されてしまうとの思いが、立ち上がりに走られた時に残像として刻まれたはずで、球際で厳しくプレーすることが難しくなったのでしょう。それによって浅野はボールを収めることができ、ランニングとポストプレーを織り交ぜることで攻撃のベースを作ってくれました。

 また、冨安健洋に代わるCBには、板倉滉が起用されました。谷口彰悟ではなく板倉にしたのは、吉田麻也と東京五輪で組んでいたことが大きな理由になったと推測します。

 吉田と冨安のコンビでは、吉田が右CBです。谷口と板倉のコンビでは、板倉が右CBでした。今回は板倉をそのまま右CBとし、左右どちらでもできる吉田が左に入りました。

【次ページ】 相手に的を絞らせなかった田中碧と守田英正

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