「大声で怒っても意味がない」甲子園優勝監督が球児との対話で実感「叱ると怒る…え、何が違うの？」仙台育英・須江監督が長年疑問に持つこと

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人の成長を「筋肉」ではなく「植物」のように考える

　知っておいてほしいのは、「苦痛神話」を信じている人は、「人間の成長を筋肉のように考えている」場合が多いことです。「マッスルモデル」と名付けるとわかりやすいでしょうか。筋肉と同じように強い負荷をかければかけるほど、心も強くなっていくと思い込んでいる。

　このイメージは指導者だけでなく、選手の中にも根深いかもしれません。中には、「私は厳しい指導のおかげで強くなれた」と思っている人もいると思いますが、自分がそうだからといってその方法がもっとも良いと考えるべきではありません。一握りの「成功例」の陰には、理不尽な苦痛に耐えきれずに、心が折れてしまった人たちが多くいるからです。

　私が提案したいのは、人の成長を“マッスルモデル”ではなく、“プラントモデル”で考える発想です。「プラント＝植物」です。植物にうまく成長してほしいなら、土を耕して、水をあげ、芽が育ちやすい環境を作ります。だれも種そのものに働きかけませんし、まして苦痛を与えようとはしません。でも、どれだけ環境を整えても、芽が育つかはわかりません。時にはジッと我慢して、待つことも必要になってきます。

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「勝利」という結果がイチ早くほしい指導者は、どうしても、「マッスルモデル」をイメージして、短期的な変化や成長を望んでしまうように感じます。子どもたちよりも経験が豊富な分、どうすればいいかがわかってしまうのです。

　だから「あれをやりなさい、これをやりなさい」と、方法論まで具体的に伝えて、自分の思い通りにコントロールしたがる傾向にあります。筋肉を鍛えるときのように、やるべきことを明確にして負荷をかけ、それを反復することで強くなると考えているのです。

　しかしながらそのやり方では、子どもたちが自分で考え自ら工夫する余地が少なく、また「楽しい」という感情も軽視されがちになるでしょう。そして指導者の思い通りにいかないと、強く「処罰欲求」が刺激され、叱らずにはいられなくなるのです。

「あるべき姿」を手放してみる

　誰かを叱っているときの、自身の心の中をイメージしてみてください。

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