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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
なぜオーストラリア戦の前半は“オープンな展開”になったのか? 中村憲剛が大一番の深層に迫る「日本は成功体験に縛られていたのでは」
posted2022/03/28 17:01
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
森保一監督率いる日本代表が、W杯出場を決めた。3月24日に行なわれたオーストラリア戦で勝利を収め、グループ2位以内を確定させたのである。
すっかりお馴染みとなった元日本代表MF中村憲剛氏に、今回も試合を振り返ってもらう。前半が慌ただしい展開になったのはなぜか。修正のポイントはどこだったのか。森保一監督の選手交代には、どのようなメッセージがこめられていたのか。オーストラリア撃破の深層が、細部まで明らかになる──。(全2回の1回目/後編へ)
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まずは森保監督とスタッフのみなさん、選手のみなさんに、「おめでとう」と伝えたいと思います。僕自身もW杯最終予選を2度経験しているので、皆さんがどれほど大きなプレッシャーを感じるのかを実体験しています。勝ち抜いて当然と言われるなかで戦い、W杯出場の歴史をつないでいく重圧は、言葉では表現できません。「本当におめでとうございます」と、もう一度伝えたいと思います。
それでは、試合を振り返りましょう。
この試合に向けたプレビューで、オーストラリアの出方をしっかりと見極め、したたかに戦って欲しいと書きましたが、前半のオーストラリアのスタンス、そしてそれに対する日本の対応は予想外のものでした。
勝ち点3差で日本を追いかけるオーストラリアは、この試合に勝たないと2位以内を確保することが非常に難しくなります。順位を引っ繰り返すために、序盤からアグレッシブに攻めてくるのか。もしくは、じっくりと戦いながら90分で決めにくるのか。大一番ならではの思考を全開にした神経戦になると想定していましたが、蓋を開けてみるとそのどちらでもなかったのは意外でした。
オーストラリアは負けたら2位以内を逃す重要な試合でありながら、普段どおりのスタンスで臨んできた。あるいは臨まざるを得なかった、と言えばいいでしょうか。グラハム・アーノルド監督には哲学があり、これまで同様の普段着のサッカーで勝利を目ざしてきたのです。映像で見た印象では細かな駆け引きがほとんどないと感じましたし、その結果として序盤から驚くほどオープンな展開になりました。
普段着のサッカーとはいえ、オーストラリアの台所事情はかなり苦しいものがありました。長身CBのハリー・サウタ―が長期離脱中で、中心選手のアーロン・ムーイ、ジャクソン・アーバイン、トム・ロギッチら、ここまでチームを引っ張ってきていた選手を多数欠いていました。ダブルボランチのコナー・メトカーフは3試合目の出場で、そのパートナーのジャンニ・ステンスネスはこの大一番が代表デビュー戦でした。
国際経験の少ない選手にとって、最終予選の空気感は簡単ではありません。試合序盤から最終ラインとダブルボランチは攻守に連携が拙く、ビルドアップもかなり苦労していました。