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悩める高校球児たちの進路事情…プロ野球側の決まり文句「育成契約でいいですか?」球児の親は「高校監督の要求に従わず“出禁”になった」
posted2022/03/16 17:04
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
AFLO
過日、中学生球児の高校進学事情についてお伝えしたが、ならば、高校球児の進路事情はいかがなものなのか?というリクエストがあり、今回は、そのへんの「ほんとのところ」について、お伝えできればと思う。
ご存じのように、高校球児の「野球的進路」については、プロ野球(NPB)、社会人野球(就職)、大学進学、独立リーグと、ざっくり言って4つがある。
(1)プロ野球、最近は「育成でもいいですか?」
プロ野球(NPB)から話を始めると、やはりご存じの通り、高校球児がプロ野球に進むには「ドラフト会議」という登竜門を経なければならないルールが今はある。
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かつては、「ドラフト外」という方法で、自由に交渉して契約できる枠があったが、2004年に高校生の「プロ野球志望届」という制度が始まってからは、必ずドラフト会議で指名しないと選手と交渉できなくなり、1965年以来の「支配下ドラフト」に加え、2005年に「育成ドラフト」が始まった。
「育成でもいいですか?っていうのが、最近のスカウトの決まり文句ですね」
高校野球の現場をあずかる指導者の方たちから、必ず聞かされる「嘆き」である。
「話の最初から、いきなりそういう切り出し方する人もいるから、正直、ムカッと来ますよ。そりゃあプロだって企業なんだから、補強費は安いほうがいいに決まってるんだけど、こっちだって、3年間、我が子のように丹精込めて育てた生徒たちですよ。それを、いちばん汚ない表現をするならば、安く買い叩こうとするわけですよ」
順調に出世街道を歩めばいいが、大きな故障でもして野球が続けられなくなった時の補償など、何もない世界だ。安心してプレーできるぐらいの貯えを得た上でのプロ挑戦でないと……。その指導者は、そこを心配していた。
「せっかくのチャンスなんだから、育成でもドラフトされたらプロへ……という監督さんもいますけど、私は育成だったら出したくない。プロ入りは選手とその家族の問題ですから、まず一家で相談して決めるのが最優先ですが、もし相談されたら、私は反対します」
理由は簡単だと、その指導者ははっきりしていた。
「高い評価をしてくれてないってことですから、育成ってことは。自信がないんですよ、プロも。だから、育成なんです。『あなたはまだ実力不足なんですよ』って、親切に教えてもらったと思って、ちょうどいい。私はプロ志望の選手にも親にも、そう話してます」
(2)社会人野球は「高校球児にとってハードルが高い」
ならば、どんな進路指導をしているのか。高校の監督さんの話は続く。