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りくりゅう、木原龍一が何度も三浦璃来に伝えた「フリーを滑らせてくれてありがとう」…衝撃の出会いから史上初の入賞まで“2年半の軌跡”
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2022/02/20 11:04
北京五輪のフィギュアスケート・ペア、日本の木原龍一・三浦璃来が自己ベストを更新する演技で、日本ペア史上初の7位入賞を果たした
団体戦からそれぞれに重圧を抱え、それでもそこから抜け出せたのは、2人のコミュニケーションが生んだ力だった。
「練習が終わったあと、三浦さんとしっかり話をして、『もうノーミスは狙わなくていいんだよね』『もう、全ミスでもいいんだよ。とにかく楽しもう』と話をしてから、2人とも気持ちが楽になりました。『もう今日は全ミス狙いでいこう』と。いつも通りのことが出せて、そこからまた、楽しいなって思いが入ってきて、心から楽しんで滑ったと思います」(木原)
三浦もまた、そこが契機になった。
「龍一君の、『全ミスでもいいからね』という言葉に救われました」
厳しい環境の日本ペア市場…それでも二人は出会った
日本のペアは先に記したように、過去14位が最高で、そもそもひと組も出場できなかったオリンピックも少なくない。木原自身はそれぞれ異なるパートナーとソチ、平昌五輪に出場しているが、どちらもフリーへ進むことができずに終わっている。
練習に広いスペースが必要だがその練習環境も整わない。指導者不足、ペアを行なえる体格の男性スケーターの不足、さまざまな点が指摘されてきた。また大会で好成績をあげられないことで注目度が低く、競技人口が増えない。だから、目指す選手が増えないという悪循環もあった。
その中で、三浦・木原ペアが生まれた。これまでの国内の上位ペアがそうであるように、海外を拠点にする2人は、結成して2年半余りに過ぎない。この短期間でここまで来ることができたのは、やはり「抜群の相性」に行き着く。前パートナーとペアを解消していた2人が、新たなパートナーを探しに参加したトライアウトでのエピソードは印象的だ。
技の1つであるツイストリフトをしたとき、1回目から投げたいタイミングが100%噛み合った。
「最初に滑った瞬間から、絶対にうまくいくと確信しました。言葉では言い表せない、相性というのがペアにはあるんだなと思います」(木原)
「ペアはどちらかが合わせるイメージでしたけど、滑ってみてお互いが合いました」(三浦)
昨年11月のNHK杯後に木原が「僕が璃来ちゃんに合わせてあげているから」と言ったときも三浦は語っている。
「合わせているんじゃなくて、合うんだよね」
会うべくして会った2人だから、ここまで来ることができた。