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“羽生結弦のライバル”パトリック・チャン31歳は不動産ブローカーに転身し父親になっていた…羽生、高橋ら日本勢に送ったエールとは?
posted2022/02/02 11:05
text by
田村明子Akiko Tamura
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本人提供
「10月に息子が生まれて、オリビエと名付けました。生活パターンが一気に変わって、慣れるのに時間がかかりました」
久しぶりに話をしたパトリックが最初に報告してきたのは、父親になったことだった。元ペア選手のエリザベス・パットナムと2020年に入籍し、2021年10月に長男のオリビエくんが誕生したのだという。
「いつ手を貸せばいいのか、いつ母親に任せておくべきなのか、そういう呼吸がわかるようになるまで、しばらくかかりましたね」とごく普通の父親ぶりをうかがわせた。
パンデミックの影響で現在は“不動産ブローカー”に
パトリックは2014年ソチオリンピックで羽生結弦に次いで銀メダルとなり、平昌オリンピックでは団体戦でカナダの金メダルに大きく貢献した。その後、2018年4月に競技から引退し、「スターズオンアイス」などショーに出演していたが、パンデミックで大きく人生設計が狂ったのだという。
「ショーがキャンセルになり、新たなキャリアを考えなくてはなりませんでした」。パトリックが選んだのは、不動産ブローカーだった。オンラインでクラスを受けて資格を取り、現在は商業物件を中心にバンクーバーで活動しているという。
スケートはまだ続けているのか。そう聞くと、「ほとんどやっていなくて、体重も現役時代より25ポンド(約12キロ)くらい増えたんです」と笑った。
「子供たちの振付をしたり、またホッケー選手たちにパワースケートのスケーティングを指導することもありますが、自分のトレーニングはもうやっていないんです。どこかで滑るあてもありませんから。今は4回転どころか、3ルッツももう跳べないと思う」
3度も世界タイトルを手にした彼が、ここまで短期間で人生をすっかり切り替えられるというのは、ちょっと驚きだった。
「シャープだった当時の自分が懐かしい気持ちはあります。でもスケートをやめたら、世界はこんなに広かったんだ、って思ったんです。ずっとスケートという世界に浸りっきりだったので」