Number ExBACK NUMBER

なぜ『SASUKE』で“一般人”は輝くのか? 総合演出家・乾雅人が語る『SASUKE』だけの魅力「山田さんと秋山さんが気づかせてくれた」 

text by

平田裕介

平田裕介Yusuke Hirata

PROFILE

photograph by©TBS

posted2021/12/28 11:07

なぜ『SASUKE』で“一般人”は輝くのか? 総合演出家・乾雅人が語る『SASUKE』だけの魅力「山田さんと秋山さんが気づかせてくれた」<Number Web> photograph by ©TBS

天空にそびえるファイナルステージ。今年は何人の出場者がここにたどり着くことになるのだろうか

なぜ『SASUKE』は“一般人”を輝かせられるのか?

ーーお二人の存在が番組の方向性を変えて、それを確固たるものにしたと。

 結局、フィールドアスレチック番組でいくらコースを難しくしていっても、誰も見てくれなくなっていっちゃうだろうなと感じていたんです。ならば、その人その人の人生を掘っていこうと。

 それぞれが『SASUKE』に対して情熱を燃やしているのはわかっているけど、その出場者が抱えている、本人しか知りえないものがある。そこを掘っていって『SASUKE』にプラスされれば、その人が障害物に挑んでいても違う見え方がするんじゃないか。そう気付かせてくれたのが、山田さんや、秋山さん。それを実践して分岐点になったのが、2000年くらいですね。

ーーどんな人でも、一瞬だけでも、スターとして輝かせる作用が『SASUKE』にはあると感じます。

 SASUKEオールスターズのメンバーで、宮崎で漁師をされている長野誠さんという方がいて。おおげさに言うと、長野さんは364日を船の上で過ごしていて、『SASUKE』に挑む1日だけがなによりの楽しみだと。彼は中学を卒業して漁師になって、ずーっと魚を捕るだけの生活だったから、スポットを浴びられる『SASUKE』が嬉しくてたまらない。しかも、漁師仲間や地元の仲間だけじゃなく、テレビを見ていた知らない人たちも「長野さんですよね。すごかったね!」と声を掛けてくれる。「自分の輝ける、唯一の場所が『SASUKE』です」っておっしゃっていましたけど、まさにそういうことなのかなと思います。

 たった1日だけでも非日常があると思わせてくれる世界が『SASUKE』で、それを求めて緑山に集まっている側面もありますね。逆にタレントさんにとっては、収録日はファンにキャーキャー言われない、そもそもファンが誰もいない非日常な1日になるし。不思議な場所であることは間違いないですね。

「出場者全員が、ボタンを押すためにやらなくてもいい」

ーーその一方で、序盤エリアで落ちるだけの方もフィーチャーしている部分がありますよね。スタート前にバーベル上げをしたりして、思いっきり体力を消耗してしまう方とか……。

 ああ、鳥澤(克秀)さん。出場者全員が、ファイナルステージの頂上でボタンを押すためにやらなくていいと僕は思ってるんです。鳥澤さんは、バーベルを上げてから2つ目のエリアまでなんとか行きたい、3つ目まで行けたら嬉しいっていう。その人だけの目標、意味、意義みたいなものがあっていいはずなので。「この人は3rdステージまで行けないから出さない」っていう思考は、果たして番組としても楽しいのだろうかと。

 鳥澤さんにバーベル上げないでくださいと言ったら、きっと「持ち上げたかったのに」という気持ちを抱えてスタートすることになる。それは彼にとって楽しい『SASUKE』じゃないし、まずは出場者が楽しめる『SASUKE』じゃないといけないと思っています。

【次ページ】 出場者選考で重要なのは「何かを大好き」と熱く語れる人

BACK 1 2 3 4 NEXT
乾雅人
SASUKE
山田勝己
松田大介
樽美酒研二
岩本照
日置将士
秋山和彦
長野誠
鳥澤克秀
塚田僚一
森本裕介

他競技の前後の記事

ページトップ