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なぜ『SASUKE』で“一般人”は輝くのか? 総合演出家・乾雅人が語る『SASUKE』だけの魅力「山田さんと秋山さんが気づかせてくれた」
text by
平田裕介Yusuke Hirata
photograph by©TBS
posted2021/12/28 11:07
天空にそびえるファイナルステージ。今年は何人の出場者がここにたどり着くことになるのだろうか
出場者選考で重要なのは「何かを大好き」と熱く語れる人
ーーお話を伺って、改めて出場者の方々が番組を支えていると痛感しました。乾さんは応募者たちの面接をされるそうですが、どこを重要視していますか?
乾 僕、26歳から『クイズ100人に聞きました』(TBS系、1979~1992年)の演出を務めていたんです。人気番組だったので、毎週地方でオーディションをやっていて、1日に100組くらい家族を見てたんですね。そこで鍛えられて、面接会場に入ってきた家族を「この一家はいい!」を瞬時に嗅ぎ分けられるようになって。
だから、『SASUKE』の面接でもわかるんです。一般参加の多くの方は「僕はこんなに練習しています」とアピールしてくれるんですけど、練習はみなさんやっているので本当は重要じゃない。自分の就いている職業やそこの社長さん、家族について、面白く話してくれる人がいいんですよ。「仕事が大好き」「子供が大好き」と熱く語れる人、なにかしら情熱を持っている人であるかを見てますかね。
ーーキャラクター、人柄に尽きると。
乾 緑山で他の出場者と仲間になれるのかも、すごく大事なことで。常連の人たちがよく言うんです。「緑山には嫌な奴がひとりもいない」って。誰ひとりとして、茶化したり、ディスったりしない。そういうことをする人がいても、どうしたって仲間に入れないので自然と淘汰されていっちゃうんですね。そのへんは僕らも感じるんですよ。編集をしていると「文句ばっかりだな」という人は、もう出てほしくないと思いますもん。
A.B.C-Zの塚田(僚一)くんが言ってたんですが、『SASUKE』は部活だと。山田さん、長野さんみたいなレジェンド級の大先輩がいて、自分たちもいて、後から入ってくる子たちもいて、みんなでなんとかして高校野球の強豪チームを倒そうぜって一丸になるノリなんだって。その輪を乱す人たちが入ってきたらいけないんですよね。
SASUKE攻略者たちの意外な“共通点”とは?
ーー最後の質問になりますが、難関を攻略する出場者の共通点みたいなものはありますか?
乾 人の話を聞く、ですね。その筆頭が、2回の完全制覇をやってのけたサスケくんこと森本裕介くん。たとえば、1stステージに5段跳びの「クワッドステップス」があるじゃないですか。彼は自分が見たことのないスタイルでチャレンジする人がいたら、飛んでいって「最初の一段目を、右から跳んだのはなぜですか?」と聞くんですよ。聞かれる人は、落ちてズブ濡れなんですけどね。でも、答えを聞いて自分でもそれを試してみて「なるほど」と理解する。
聞かれたほうは、「サスケくん、僕に聞いたってしょうがないよ」と思うじゃないですか。でも、彼としては、落ちたからダメという気持ちは一切ないんです。なぜなのかを知りたいだけ。そうやって彼がトップに上り詰めたのを他の人たちは見ているから、彼らも失敗した出場者からなにかを学び取りつつ、敬意も払うわけですよ。いまや、どの出場者も聞いて回ってますよ。「あそこのやり方はすごいよね」「でも、落ちてるんだけど」「いや、関係ない。すごくない?」って。そこには、僕もすごく胸を打たれて。「チャンピオンだから、俺のやってることが正解なんだ」ってなりがちじゃないですか。でも、トップが質問攻めをしに行くのを見て「すごいな」って。
どんな立場にあろうとも、真摯に人から話を聞いて研究する姿勢を持っている。それが難関を攻略する出場者の共通点ですね。