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松坂大輔41歳が振り返る“何度ものケガとどう向き合ってきたか?”「10年前トミー・ジョン手術でメスを入れたら…ヒジの靭帯が無かった」
text by
吉井妙子Taeko Yoshii
photograph byShigeki Yamamoto
posted2021/11/30 11:00
23年の現役生活を終えた松坂大輔さんと再生医療の分野で躍進を遂げるセルソース社長の裙本理人さん
松坂 怪我や痛みを感じたとき、PRPやPFC-FDなど血液から作製されるものと、幹細胞をどのように使い分ければいいんですか。
裙本 利用者が多いのは高齢者の変形性膝関節症なんですが、スポーツ障害でいうならPRPやPFC-FDが第一選択になって、骨がかなり傷んで軟骨の修復もしなければならないときは、医師の判断のもと幹細胞を追加投与ですかね。
いずれにしろ、PRP・PFC-FDも幹細胞も肩腱板損傷、ゴルフ肘、テニス肘、変形性股関節症、肉離れ、アキレス腱炎、半月板損傷、膝靭帯損傷、手首や足首の損傷などスポーツ障害の治療にはかなり有効です。何よりメスを入れなくて済むのがいい。メスを入れてしまうと、入院しなきゃならないし、復帰まで時間がかかるので、アスリートにとってはその時間が大変な損失になると思います。
「トミー・ジョン手術でメスを入れたら…靭帯がもう無かった」
松坂 確かに。再生医療は血小板や幹細胞を自分の患部に注射するだけですからね。例えば、半月板を痛めた場合、どれくらいで復帰できますか。
裙本 ある陸上選手は3月に治療を開始し、その年の12月にはアジア大会の短距離で優勝しています。
松坂 復帰までかなり時間が短縮されますね。僕はトミー・ジョン手術を受ける前にPRP療法を試みたのですが、結局ダメでメスを入れる決断をしたんですけど、開けてみたら靭帯そのものが切れてもう無かった(笑)。
裙本 えっ、それでよくあんな剛速球を投げていましたね。
松坂 うーん、切れていても投げられるんだ、とその時思ったけど(笑)。でも僕がアメリカでPRP療法を受けてから10年ぐらい経つので、今の技術はもっと進んでいますよね。
裙本 加工技術が格段に進歩していて、血液量から取り出せる成長因子の濃度が違いますね。セルソースが特許を取った技術(PFC-FD)は、濃縮した成長因子を特殊な処理方法で凍結乾燥しパウダー化しているので、医療機関で長期保存が可能なんです。だから一旦血液を採取し、パウダー状にしてかかりつけの整形外科に保存しておけば、ケガした時にすぐに治療に使えます。<#2へ続く>