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41歳松坂大輔が明かす“10年前、手術を決意した日”「イチローさんに怒られた…『バッピみたいな球投げてんじゃねーよ』って」
posted2021/11/30 11:05
text by
吉井妙子Taeko Yoshii
photograph by
KYODO
野球人生の後半は度重なる手術やケガで満身創痍の中、「ボロボロになるまで」投げ続けた。多くのケガを経験してきたからこそ、松坂は今アスリートのケガと治療に興味を持っていると話す。そこで再生医療の分野で躍進を遂げるセルソース社長の裙本理人さんと対談を行った(全3回の2回目/#1、#3へ)。
松坂「13年間ケガと戦ってきた現実の姿でした」
松坂 ただ、選手自身がまだ再生医療の利便性を知らないですよね。
裙本 そこが僕らの課題なんです。J1やJ2のサッカーチームの多くとメディカルサポート契約していますし、実業団の陸上部などもサポートしています。ただ、肝心の選手らに再生医療の有効性をどれだけ伝えていけるかが重要な課題だと思っています。
松坂 確かに僕はケガが多かったので、何とか治したいという思いから、最先端医療の知識を求めたし、病院もあちこち巡ったので、治療法に対する情報をかなり持っているつもりですが、現役の選手は多少痛くても我慢しちゃうし、体が動かなくなって初めて事の重大さに気づく、というケースが未だに多いんじゃないかな。
裙本 松坂さんも痛みに強そうですね。
松坂 それが今考えれば間違っていたなと思うからこそ、今こうやって、初期治療の大切さや痛みを軽視しない重要性を、声を大にして言うべきだと考えたんです。僕は現役後半の13年間はケガに苦しみながらもマウンドに上がりたい一心であらゆる治療やケア、リハビリをやってきましたけど、結局、初期の対応を間違えると負のスパイラルに陥ってしまうと実感しています。
引退試合も、あの時持っている力をすべてボールに注ぎ込みましたけど、118kmしか出せなかったし、5球を投げるのが精いっぱいだった。情けない姿をお見せしましたけど、あれが13年間ケガと戦ってきた現実の姿でした。
裙本 引退試合の松坂さんの姿に感動した人は大勢います。すべての力を出し切った松坂さんはやっぱり凄くカッコよかった。
松坂 でも、僕の理想の引退の姿ではなかったですね。僕は、自分の球がバッターに通用しなくなって引退したかった、ケガではなく。だからこれからの若い選手、アスリートがケガで現役を引退せざるを得ない状況を、できるだけ減らすような環境になって欲しい。
実は僕、足から首までほぼ全身どこか痛めた経験があるので、周りから“ケガのデパート”と揶揄されていますけど、そんな体験を後輩たちに伝え、1日でも1年でも長く、今の選手たちには現役を続けていってもらいたいと考えているんです。
ケガで休むと「誰かにポジションを奪われる」
裙本 今、一番声を大にして後輩たちに言いたいことは何ですか。