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日本ハム新ボールパーク構想はいつ生まれたのか?《総工費600億》巨大な夢に挑む男たちの舞台裏「吉村さんなくして語れない」

posted2021/11/30 11:01

 
日本ハム新ボールパーク構想はいつ生まれたのか?《総工費600億》巨大な夢に挑む男たちの舞台裏「吉村さんなくして語れない」<Number Web> photograph by ES CON FIELD HOKKAIDO

2023年春に開場する北海道日本ハムファイターズの新スタジアム「エスコンフィールドHOKKAIDO」のパース図

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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ES CON FIELD HOKKAIDO

 札幌を訪れるときは新千歳空港から電車に乗ることにしている。目的地までの約40分、大きな車窓から雄大な景色を眺めるのだ。

 これまでは、南千歳、千歳、恵庭とその辺りまで来ると景色に飽きてくるのが常だったが、2019年頃からこの列車の愉しみは最後まで続くようになった。札幌に到着する間際になったところで特別な光景が見られるからだ。

 札幌の2つ前、「北広島」という駅を過ぎてまもなくのことだ。進行方向左手に、空へ伸びる何本もの巨大なクレーンが出現する。その下には骨組みの建造物があり、見る側の想像を掻き立てる。

 そして看板の文字が目に飛び込んできて、答えをくれる。

『世界がまだ見ぬボールパークをつくろう』

 2023年春に開場する北海道日本ハムファイターズの新スタジアム「エスコンフィールドHOKKAIDO」である。

 その土地は、まだ北広島市が町政であった頃から整備予定地とされていたが、手つかずのまま放置されてきた。原野に草木が生え、やがて雑木林になった。何十年ものあいだ、誰も気にしなかった場所に、誰もが振り向かずにはいられない建造物が姿を現したのだ。

「本当にできるのか?」

「『そんなことが本当にできるのか? 無茶だろう?』。そういうことはずっと言われてきました」

 株式会社ファイターズスポーツ&エンターテイメント(FSE)で取締役・事業統轄本部長を務める前沢賢は言った。長く厳しい冬が訪れる北海道で屋外天然芝のスタジアムをつくり、それを基点に街づくりをする。しかも200万都市の札幌ではなく、人口6万人の北広島に。

 この世界初のボールパーク構想の発案者であり、推進者であり、責任者でもある前沢のもとには、建設が始まったころでも、「本当にできるのか?」という懐疑的な声が届いたという。

【次ページ】 10年夏、40ページにも及ぶ企画書

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