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松坂大輔41歳が振り返る“何度ものケガとどう向き合ってきたか?”「10年前トミー・ジョン手術でメスを入れたら…ヒジの靭帯が無かった」
text by
吉井妙子Taeko Yoshii
photograph byShigeki Yamamoto
posted2021/11/30 11:00
23年の現役生活を終えた松坂大輔さんと再生医療の分野で躍進を遂げるセルソース社長の裙本理人さん
松坂 2011年6月に肘のトミー・ジョン手術を受けたのですが、その前にやっていたし、それ以前にも肉離れを起こした時にPRP治療を受けています。取り入れるのは早かったと思いますね。自分を実験台にしてみようという意識もあったので。日本でもやりましたよ。15年に肩の手術をしたのですが、18年には幹細胞治療も受けています。
直近でいうと、引退試合直後の10月下旬に膝の手術をし、その1週間後にリカバリーを促進する意味でPFC-FDを用いた治療をしたんです。今年6月に西武ライオンズがセルソースとメディカルサポート契約をしたと聞いたので、チームにお願いし契約医療機関で治療を受けたんです。
裙本 経過はいかがですか。
松坂 痛みはないのですが、結構腫れたり水が溜まったりしました。でもそれは好転反応らしく、医師にも成長因子が活発なので反応が人より出やすいと言われたんです。
裙本 PRP治療にはその人の成長因子によって個人差はあります。松坂さんの場合は、分析した結果を僕は見ていないので確実なことは言えませんが、凄い成長因子が入っているのかもしれませんね。
松坂 これから再生医療はアスリートにとって身近な治療になってくるはずなので、僕の場合はこんな時に受けて、こういう反応が出たということを、必要な人に伝えられたらいいな、と考えているんです。
自分の脂肪や血液を使うため「復帰が早まる」
――PRPや幹細胞治療などの再生医療、そしてその可能性についてもう少し詳しく教えていただけますか。
裙本 自己治癒力をサポートするPRP療法は、50ccほどの血液を採取し、特殊な技術を用いて血液中の血小板由来の成長因子だけを抽出し、これを傷に注射することによって抗炎症作用や組織の修復が期待され、早期復帰や痛みの軽減が期待されます。
また幹細胞は脂肪組織を20ccほど採取し、これまた特殊な加工技術で幹細胞を抽出・培養し、傷ついた箇所や痛みのある所に注入することで修復を促進することができます。
いずれも自分の脂肪や血液を使うため、拒絶反応やアレルギーなどの副作用が起こりにくいし、早期治療に役立ちます。何よりアスリートにとっては復帰時期がぐんと早まるのが最大のメリットだと思いますね。
松坂 セルソースはPRPや幹細胞を加工・培養する会社と考えていいんですか。
裙本 その通りです。以前は病院やクリニックが独自にPRPや幹細胞を培養しなければならず、その技術・コストも大変で再生医療がなかなか進まない原因になっていたんです。
でも日本で14年に再生医療の法律が変わり、民間も参入できることになったので、15年にセルソースを立ち上げ、医療機関から委託を受けて再生医療などに用いるための細胞や血液の加工事業をスタートさせました。
今現在、契約している医療機関は1000カ所ほどありますので、全国どこでもセルソースの再生医療技術を受けられるはずです。