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甲子園4強から茨の道に…大学不合格、3度のクラスター、監督解任、試練を乗り越えた中部学院大の主将「感謝でいっぱい」 

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高木遊

高木遊Yu Takagi

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posted2021/11/26 17:01

甲子園4強から茨の道に…大学不合格、3度のクラスター、監督解任、試練を乗り越えた中部学院大の主将「感謝でいっぱい」<Number Web> photograph by Yu Takagi

明治神宮大会に出場した中部学院大の主将・廣部就平。活動ができない時期を乗り越え、大舞台にたどり着いた

 1年秋には4番打者として明治神宮大会に出場。雨が降りしきり地面がぬかるむコンディションの中で初戦敗退となったが、「雨の中でもスタンドから声援を送ってもらったので、全国大会は素晴らしい場所だと感じました」と、再び帰ってくることを胸に誓った。

 しかし、そこからは茨の道が続いた。

 2年時に春秋連続で全国大会出場を逃すと、3年時からは新型コロナウイルスの猛威にさらされた。昨年7月に1度目のクラスター(集団感染)が発生。感染者の少ない地域であったことや大学球界でも初めての事例だったこともあり、ネット上では誹謗中傷も受けた。さらに春季リーグで首位を走っていた今年5月に2度目のクラスターが発生し、残りの公式戦を辞退。全日本大学野球選手権出場への道を絶たれていた。

「全国でも戦えるという自信があるチームだったので、みんなが本当にショックを受けていました。何人かの陽性者が出て『明日の試合は無理だろう』と言われたときは泣いている選手もいました」

 以降は対策をより強化した。外出自粛はもちろんのこと練習も少人数で、10班にも分かれて行われた。だが、秋季リーグ開幕前の9月に3度目のクラスターが発生。「もうどうしたらいいのか分からない」状況に加え、異例の事態を招いたとして原監督の解任も決まり、チームに衝撃が走った。

「どこから感染したんだろう? と全員が思っていました。監督が解任となった時は陽性になってしまった部員が『僕たちのせいで……』と責任を感じていました。僕も監督に誘われてこの大学に入ってきて、“監督を日本一にしたい”という思いで戦ってきたので本当にショックでした」

「原監督のためにも負けられない」

 野球部OBを中心に原監督の解任撤回を求める署名運動も起こる中、廣部はなんとかチームを勝利に向かわせようと腐心した。「原監督のためにも絶対に負けられない」を合言葉にチームをまとめ、明治神宮大会の出場権を得られれば監督も戻ってこられるのではないかと懸命に戦った。

 廣部を中心に一丸となったチームは、岐阜学生リーグと東海地区大会、3連盟(愛知、東海地区、北陸)王座決定戦を勝ち上がり、3年ぶりの出場を決めたのだった。

【次ページ】 今季は中学以来の「捕手」に挑戦

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中部学院大学
廣部就平

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