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大学4冠を狙う慶應を倒した雑草軍団の「わっしょい野球」2部入替戦も覚悟した中央学院大はなぜ日本一になれた?

posted2021/11/26 11:01

 
大学4冠を狙う慶應を倒した雑草軍団の「わっしょい野球」2部入替戦も覚悟した中央学院大はなぜ日本一になれた?<Number Web> photograph by Yu Takagi

明治神宮大会で初優勝した中央学院大学。春秋連覇を狙う慶應大など強豪校を撃破しての快進撃だった

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 何度倒れても立ち上がる雑草軍団が、大学日本一の栄冠に輝いた。

 11月25日、第52回明治神宮野球大会・大学の部の決勝戦が行われ、“大学4冠”を目指した慶應義塾大を9-8で退けて千葉県大学リーグに所属する中央学院大が初優勝を達成した。ともにドラフト指名選手2人を擁する東都大学リーグ王者の國學院大、東京六大学リーグ王者の慶應大というエリート集団を立て続けに破っての快挙だった。

 決勝戦の先発9人のうち甲子園出場経験者は3人だが、4年生は7人。主将・武田登生(中央学院高出身)が「下級生の頃から試合に出ている選手が多く、たくさんの悔しさを糧に成長できました」と語るように、大学野球で力をつけてきた選手たちが主軸を務めた。

 春季リーグは「あと1勝」から優勝を逃し、秋季リーグも1勝3敗スタート。2部リーグとの入替戦も覚悟したほどだったが、そこから無傷の公式戦12連勝で日本一に駆け上がった。そんな奇跡を起こせた要因は、勝っていても負けていても明るいチームの雰囲気だ。武田はそれを「わっしょい野球」と称する。

「たかが2点だぞー!」

 決勝戦でも「わっしょい野球」は健在だった。前日の準決勝でエースの古田島成龍(4年)が90球投じたこともあり、先発を託されたのは今大会初登板の4年生・畔柳光(西武台千葉高出身)。大学卒業後は軟式野球を行うため、硬式野球人生最後の登板がこれ以上ない大舞台となった。

 しかし、先頭打者を四球で出すと慶大2番・萩尾匡也(3年)に2ラン本塁打を浴びて開始早々、先制点を許す苦しい立ち上がりに。重苦しい雰囲気が中央学院大ベンチに漂い始める中、ポジティブな声がそれを一蹴する。

「たかが2点だぞー!」

 1回表が終わり、ベンチでそう叫んだのは古田島だった。先発時でも攻撃中に大きな声を出してチームを盛り上げるムードメーカー役も担うエースは、決勝戦でもいつも通りの前向きな姿勢を一切崩さなかった。

【次ページ】 2試合連続弾の佐藤が悔やむ「あの送球」

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