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ヤクルト高津“二軍監督”が語っていた「3年目の高橋奎二は回復が追いつかない」6年前の“高卒ドラ3”が日本シリーズでプロ初完封するまで
posted2021/11/23 11:08
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Naoya Sanuki
2対0。
緊張感に満ちた日本シリーズ第2戦はヤクルトが勝ち、1勝1敗の五分に星を戻した。
試合後、インタビューに答えた高津臣吾監督は、完封勝ちを収めた高橋奎二について問われると、感慨深そうにこう答えた。
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「よくここまで投げました……ここまで投げられるようになりましたね。ずっと、鍛えてきた成果が今日出たのかと」
京都の龍谷大平安高出身、プロ6年目の高橋奎二にとって、完封はもちろんのこと、完投もはじめてのことだった。
高津監督が思いを込めた表情を浮かべたのには、理由がある。
3年前「高橋奎二は、回復が追いつかない」
2016年にドラフト3位で入団した高橋だが、その2年目に二軍監督に就任したのが高津監督だった。2018年の時点で、高橋について高津監督はこう話していた。
「高橋奎二は、いまでも2週間に一度であれば、一軍でクオリティピッチングが出来ます。ゲームを作れるんですよ。でも、回復が追いつかない。だから、一軍で先発したら、登録を抹消して、二軍の戸田球場で調整して、次の2週間後の登板に備える。いまは、それでいい」
回復に時間を必要とするというのは、体力がないということなのか質問すると、「そういうわけでもない」と高津監督は言った。
「高校野球と違って、プロの投球ってものすごく疲れるんです。1球、1球にすべて意味があるし、それこそ失投したら、バコーンと打たれる。プロの仕事で必要なのは、1週間でその疲れから回復することで、高橋奎二はまだそのノウハウというか、スキルを身につけていない段階です。体力をつけていくこともやっているし、高橋自身も調整法を学んでいくのが仕事ですね」
聞けば、高橋は向上心が旺盛で、一軍での先発登板後も、負荷の高いトレーニングを自身に課していた。
高橋は「気持ちの人」でもあり、一度の登板での出力も高いからダメージも大きい。本当は、回復に集中すべきところだが、本人の性格と折り合いがついていない段階だった。
二軍監督としては、「もっとゆっくり」ということも可能だったろうが、高津監督は、調整法を高橋に任せていたという。
「こちらとしては、必要なことは伝えてます。最低限、これだけはやって欲しいというね。もちろん、トレーニングの質と量を落とすように言うのは、簡単です。でも、それだと自分で限界が見極められないでしょ。それを高橋自身が見つけてくれればいい。二軍って、そういう場所だから」
今季「4勝1敗」だが中身が違う
高橋の成長は、ゆったりだった。年度別の成績を見ると、次のようになる。