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「自分の立場をもう少しわかってほしい」オリックス山岡泰輔が心に刻む “26球”と監督室での会話《神戸で注文したクレープ90個》
posted2021/11/23 11:07
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Sankei Shimbun
日本シリーズ開幕の2日前、11月18日に公示されたオリックスの日本シリーズ出場資格者名簿40名の中に、山岡泰輔の名前があった。
山岡は今年9月に右肘のクリーニング手術を受けてから順調に回復。11月16日の紅白戦で実戦復帰を果たしていた。
日本シリーズでは出場資格者40名のうち、試合ごとに26名がベンチ入りするが、ここまで行われた1、2戦で、山岡はまだベンチに入っていない。それは山岡自身、ある程度覚悟していたようだった。16日の紅白戦登板後、こう語っていた。
「必要か必要じゃないか、投げさせるか投げさせないかは、チームに判断してもらうこと。チームはこの状況で勝ってきているから、そこに無理に僕が入るより、チームのことを考えたら、絶対に今までのパターンで行ったほうがいいと思う。僕は、万が一何かあった時の“保険”として、自分も投げられるように、準備だけはしておこうかなと思っています」
「悔しい」よりも「嬉しい」
一軍での登板は、6月22日の日本ハム戦以来遠ざかっている。山岡は入団1年目の2017年から先発ローテーションを担い、昨年まで2年連続で開幕投手を任された。2019年には13勝4敗で最高勝率のタイトルを獲得。山本由伸とのダブルエースでチームを支えた。だがチームは入団以来ずっとBクラスで、過去2年は最下位に終わっていた。
そのチームが今年、優勝に向けて突き進む中、自身がその戦いに加わることができないことが、どれだけ無念だったかは想像に難くない。だが山岡は言う。
「もちろん悔しい思いはありましたけど、嬉しいほうが大きかったですね。入った時からずっと、優勝したい、優勝させたいっていう気持ちが強かったから。自分が活躍するしない以前に、『やっと優勝できた』という嬉しさがありました。そこに手を貸せなかったという悔しさはもちろんありますけど、そっちのほうが強いというのはないですね」
当然焦りはあったが、高山郁夫投手コーチや中嶋聡監督は、「来シーズンちゃんと投げてくれたらいいから、焦るな」と言い続けた。
それでも、9月17日に手術を受けてからの回復は早く、焦りや不安を、投げられる楽しみが上回っていった。