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元引きこもりレスラー真琴が聖地・後楽園ホールで15周年大会「ほぼ満員なのに赤字」「強豪同期にフォール負け」でも手にした“ご褒美” 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2021/11/11 11:05

元引きこもりレスラー真琴が聖地・後楽園ホールで15周年大会「ほぼ満員なのに赤字」「強豪同期にフォール負け」でも手にした“ご褒美”<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

11月1日に後楽園ホールで開催された真琴15周年記念興行にて

 ただ、相手からすれば闘いやすいシチュエーションでもあった。何しろ狙いは“主役”の真琴だけ。序盤から真琴への集中攻撃が続いた。見ている感覚としては“よってたかって”だ。

 要所で反撃していった真琴だが最後は中森にフォール負け。フィニッシュ直前には、4人の得意技を立て続けに食らった。

「今日勝って“私も同期だ”って堂々と言いたかったのに。同期、強いなぁ」

 試合後の真琴は言った。もちろんそれは最初から分かっていたことだ。どう考えても自分に不利なマッチメイクも含めて、彼女はやりたいようにやった。興行全体としてもメインのリング上でも、自分なりの形で“闘う”姿勢を見せた。

「プロレスから逃げたことは一度もありません」

 トリッシュとともに憧れた三田英津子さんがサプライズで登場すると挙動不審なところを見せたものの、エンディングの挨拶は見事なものだった。

「自分がプロレスラーに向いてるとは思わないし、プロレスラーだと胸を張って言うこともできません。でも私はプロレスから逃げたことは一度もありません。それは認めてください。逃げなかったから、続けてきたからこんなに素敵な光景を見ることができました」

 ほぼ満員の観客が持つサイリウムに照らされて、真琴は言った。オープニング映像では、真琴が「映画館で53回見た」というアニメ『鬼滅の刃』の煉獄杏寿郎役、日野聡がナレーションを担当してくれた。すべてが真琴の15年へのご褒美だった。

 忘れられない一夜を過ごした真琴だが、自主興行はもうやりたくないとキッパリ。客席が埋まったのも他の選手のファンが来たからじゃないかと、つい弱気になる。けれどこんなことも言う。

「興行はもうやりたくない。だから『真琴プロレス』とか(団体を)やろうかな」

 それは単発の自主興行より大変なんじゃないのかと思うが、真琴の中ではそうでもないのか。なにしろ引きこもりが15年経ったら“聖地”興行を成功させてしまったのだ。デビュー20周年、30周年記念が『真琴プロレス』のビッグマッチになる可能性は否定できない。むしろ積極的に楽しみにしたい。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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