箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
1ブランドのシェア率9割の異常事態も…学生ランナー界の“厚底シューズ大戦争”はいまどうなっているのか?
posted2021/10/22 11:02
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph by
Nanae Suzuki
2年ぶりの開催となった出雲駅伝。東京国際大が初出場、優勝を飾ったレースで“王者”は強かった。出場120人中102人がナイキのシューズを着用していたのだ。
ナイキのシェア率は85.0%にのぼる。アシックス、ミズノ、アディダス、ニューバランス、ブルックス、ホカオネオネ、オン、アンダーアーマー、リーボック、プーマなど人気スポーツブランドがひしめくなかで、この数字は驚異的といえるだろう。
それだけナイキの厚底シューズはライバルたちの“先”を独走しているのだ。
17年発売の「厚底シューズ」で一気にトップへ
筆者の大学時代(95~99年)はアシックスとミズノが2大勢力だった。詳細データはないが、当時学生ランナーの大半はどちらかのメーカーを履いていたと記憶している。ナイキは少数派だった。
箱根駅伝でいうと、厚底シューズが登場する直前の2017年大会は出場210人のうち、アシックスが67人(31.9%)、ミズノが54人(25.7%)、アディダスが49人(23.3%)、ナイキが36人(17.1%)、ニューバランスが4人(1.9%)というデータが残っている。
しかし、ナイキが2017年夏に厚底シューズ(当時のモデルはズーム ヴェイパーフライ 4%)を本格投入すると、世界のマラソンシーンが一変する。ナイキ厚底シューズを履いた選手たちが好タイムを連発。メジャーレースで表彰台を独占するようになったのだ。16年間も止まったままだった男子マラソンの日本記録はナイキ厚底シューズにより4度も塗り替えられた。
箱根駅伝ランナーにおけるナイキのシェア率も急上昇。2018年が27.6%、2019年が41.2%、2020年が84.3%と右肩上がりで増え続けた。昨年11月の全日本大学駅伝は200人中186人(93.0%)。今年正月の箱根駅伝は出場210人中201人で、着用率は95.7%に到達した。ナイキ以外の選手はわずか9人。4年前までトップだったアシックスは1人もいなかった。
「1ブランドでシェア率9割超え」が異常であるワケ
これは“異常”ともいえる数値だろう。なぜなら、箱根駅伝に出場する大学の多くはスポーツメーカーとユニフォーム契約をかわしているからだ。